2025年度の予算編成がいよいよ本格化しています。この予算編成では、無計画な歳出の増大を抑え、新たな成長の原動力となる「賢い支出」を実現することが求められています。これは、次期首相にとって避けて通れない課題と言えるでしょう。
財務省は2024年8月末に2025年度の予算概算要求を締め切り、一般会計総額が117兆円を超える見込みであることを発表しました。これは過去最大額であり、110兆円を超えるのは4年連続のことです。新型コロナウイルスの影響で増加した支出がそのまま維持されている現状では、予算の縮小が見込めないのも事実です。
さらに、2025年度の予算編成がこれまでと大きく異なるのは、日銀が利上げを開始し、長らく続いた超低金利時代が終わりを迎えた点です。財務省は国債の元利払い費を29兆円弱と見積もっていますが、これは2024年度比で7%増加しており、利上げに伴う負担増が反映されています。このように、借金返済の負担が増す一方で、物価高の影響もあり、歳出を削減する余地は限られています。
注目すべきは、防衛費と社会保障費の動向です。防衛省は2024年度比で7.4%増の約8兆5000億円を要求しました。これには、敵のミサイル拠点を攻撃する「反撃能力」の運用に必要な衛星網整備費などが含まれています。日本を取り巻く安全保障環境を考えると、防衛力強化は必要不可欠ですが、その一方で無駄な費用が含まれていないか厳しく検証する必要があります。特に、防衛省や自衛隊の不祥事が相次ぐ中では、国民の信頼を取り戻す努力も欠かせません。
また、厚生労働省は約34兆3000億円を要求しており、これも過去最大規模となっています。高齢化と物価高が相まって社会保障費の増加が止まりませんが、デジタル化を進めることで効率化を図り、医療制度改革など抜本的な見直しを進める必要があります。
問題は、各省庁が重要政策として位置づけた事業に関して具体的な金額を提示しなくても良い「事項要求」という仕組みです。これにより、要求額が青天井となりかねない状況が生じています。年末に向けた予算編成では、このような無駄遣いを徹底的に排除し、半導体や脱炭素といった成長分野への投資に重点を置くことが求められます。
財政健全化と経済成長の両立をどのように実現するのか。このテーマは、事実上次期首相を選ぶ場となる自民党総裁選において、各候補者に問われるべき重要な論点です。リーダーシップが何よりも求められる今、政治が示す方向性が未来の日本を形作る鍵を握っています。