【2019年6月】米中摩擦と利下げ期待に揺れる市場!プロも動けない「安全資産シフト」の真相と ∗∗AI∗∗ 時代の投資戦略

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2019年6月6日の東京株式市場では、前日の米国株の力強い上昇に後押しされ、日経平均株価が6日ぶりに反発を見せました。この背景には、米連邦準備理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が、世界経済の減速懸念や貿易摩擦による不透明感を踏まえ、将来的な利下げを示唆したことが挙げられます。しかし、この株価の反発は、安心感を伴う本格的な上昇というよりも、むしろ急速な下落に対する「買い戻し」の側面が強いと専門家は見ているようです。市場のムードは依然として慎重で、特にヘッジファンドなどの短期的な利益を追求する投資家は、身動きが取りづらい状況に置かれていると報じられています。

実際、6月5日の日本株市場はほぼ全面高となりましたが、ヘッジファンド関係者が注目したのは、その前の日から株価を大きく下げていた銘柄の動きでした。例えば、中国関連株や景気変動に敏感な素材株であるユニチカやフジクラといった銘柄が、わずか2日間で10%以上も急騰しています。これらの銘柄は、5月には約20%も下落していたことが共通しており、今回の急騰は、株価下落を見込んでいた「売り方」が損失を確定するために行う買い戻しが背景にあると考えられます。この潮目の変化を敏感に察知したのは、FRB当局者による利下げ容認発言がきっかけでした。

しかしながら、日本株の戻り基調は米国株に比べると勢いを欠いており、「この反発に持続力はないだろう」と、ヴィレッジキャピタルの高松一郎氏のように、依然として慎重な見解を示す専門家も少なくありません。ニューヨークのヘッジファンド関係者からも「ここ数日、値動きがおかしい」との声が聞かれ、一部のファンドは運用資産のポジション縮小、つまりリスク資産への投資比率を引き下げることを余儀なくされているのではないかとの憶測も流れています。実際に、著名な英ウッドフォード・インベストメント・マネジメントでは、投資家からの資金流出が相次ぎ、資金の償還停止という事態も発生しているのです。

この動きは、ヘッジファンド業界全体の苦境を映し出しています。2019年5月のHFRヘッジファンド指数では、景気や金利の動きに応じて先物などの取引を行うマクロCTA型や、空売りと買いを組み合わせる株式ロング・ショート型といった戦略が、軒並み2%前後のマイナスに沈みました。投資家が不安から資金を引き揚げる動きが加速することで、運用会社は保有する株式などの資産を売却せざるを得なくなり、さらに相場を下押しするという悪循環が生まれる可能性があります。私は、こうした局面こそ、ファンドマネージャーの手腕と相場観が試される「真の勝負どころ」だと感じています。

パウエル・プットと安全資産へのシフト

今回の反発は、市場では「パウエル・プット」という言葉で表現されています。これは、株価が下落した際にFRB議長(パウエル氏)が利下げという金融緩和策で株価の下支えに動く、という投資家の期待を指す言葉で、「プット」とは株価の下落時に利益が出る金融商品の名称に由来します。しかし、このFRB頼みの相場に完全に安心することはできないと考える投資家も多く、資金は米国債や金(ゴールド)といった、経済が不安定な時に価値が安定しやすいとされる安全資産へと振り向けられています。

あのジョージ・ソロス氏の右腕として知られた著名投資家、スタンレー・ドラッケンミラー氏も「この環境ではリスクを取りたくない」と明言し、自身の資産を米国債に移したことが伝えられています。これは、市場の不安定さが一時的なものではなく、中長期的に続く可能性をプロの投資家が強く意識している証拠でしょう。リスクを回避し、キャッシュや国債で機会を待つという姿勢は、混迷を極める現代の投資環境においては、非常に賢明な選択肢であると私は評価します。

一方で、海外拠点のファンドの中には、一風変わった動きも見られます。彼らが注目しているのは、大きな変革期を迎えている日本企業です。米国のヘッジファンドのリサーチ担当者は、「米国株はもはや割高感が否めない」とし、代わりに「企業統治(ガバナンス)の改善余地がある銘柄を日本で積極的に探したい」と語っています。具体的には、アクティビスト(モノ言う株主)が取締役に就任したオリンパスなどの銘柄に人気が集まっているようです。企業統治とは、企業の経営を監視・統制する仕組みのことで、これが不十分だと株主の利益が損なわれやすくなります。

しかし、こうした日本株への注目は、残念ながら市場全体を押し上げるほどの力はまだ持っていません。「日本に目を向けたくなるほど、米国株での投資が難しくなっている」という側面が大きいというのが実情でしょう。目先の市場では、利下げ期待が高まる6月半ばの米連邦公開市場委員会(FOMC)や、6月末に予定されている20カ国・地域首脳会議(G20サミット)での米中首脳会談など、大きなイベントが目白押しであり、投資家が大規模なポジション、つまり多額の資金を投じることを躊躇しています。

市場の「大波」を起こす力が衰えている中で、多くのヘッジファンドは「一進一退の小波を、いかにうまく乗りこなすか」という短期的な戦略に徹している模様です。年後半の巻き返しを目指すファンドも多いと聞きますが、彼らが本格的な買い姿勢に転じるまでは、日本株市場の上昇も限定的なものになるだろうというのが、現状での冷静な見通しと言えるでしょう。この不安定な相場環境は、まさに投資家一人ひとりの情報収集能力と判断力が問われる試練の時だと考えます。

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