2020年東京五輪・パラリンピックの開幕まで、2019年07月24日をもってちょうど残り1年となりました。この記念すべき節目を迎え、競技会場を抱える各自治体では、実施競技の魅力を伝える普及活動を一段と加速させています。トップアスリートによる迫力満点の模範試合や、最新のバーチャル技術を駆使した体験会など、その手法は実に多種多様です。単に大会を成功させるだけでなく、競技そのものを地域に根付かせようとする現場の熱気をお伝えします。
こうした自治体の積極的な動きに対し、SNS上では「地元で世界レベルの試合が見られるのは嬉しい」「マイナー競技だと思っていたけれど、体験してみると意外と奥が深い」といった好意的な反響が広がっています。一方で「五輪が終わった後に施設が放置されないか心配」という冷静な声も少なくありません。住民の皆様にとって、五輪は単なる一過性の祭典ではなく、自分たちの街がどう変わるのかを見極める重要なターニングポイントとして捉えられているようです。
東京都品川区では、ホッケー競技の認知度向上に知恵を絞っています。ホッケーは「氷上のスポーツ」と混同されがちですが、五輪で行われるのは天然芝や人工芝の上でボールを奪い合うフィールドホッケーです。都の調査では認知度が全33競技中ワースト4位という厳しい結果も出ていますが、2019年07月28日には強豪チームによるエキシビションマッチが開催されます。元日本代表を職員に迎えるなど、本気でファン層を広げようとする区の姿勢には目を見張るものがあります。
五輪の記憶を「負の遺産」にしないための自治体の創意工夫
カヌー競技の拠点化を目指す江戸川区では、2019年08月04日のイベントでVR(仮想現実)技術を用いた疑似体験設備を公開します。これはヘッドマウントディスプレイを装着することで、あたかも自分が激流を下っているかのような視覚効果や振動を体感できるシステムです。専門学校と連携して開発されたこの設備は、2019年10月14日まで開催される展示会でも体験可能です。こうした最新技術の活用は、若年層が競技に興味を持つ素晴らしいきっかけになるでしょう。
千葉県や神奈川県でも、2019年07月下旬から08月にかけて大規模なイベントが目白押しです。千葉県ではレスリングの吉田沙保里さんら著名なメダリストを招き、「スマートフェンシング」と呼ばれる安全な装備を使った体験コーナーを設けます。これはセンサー内蔵の剣とジャケットを使用し、初心者でも手軽にポイント制の駆け引きを楽しめる仕組みです。ルールが複雑に見える競技ほど、実際に体験して「楽しさのツボ」を理解してもらう戦略は非常に有効だと言えます。
射撃会場となる埼玉県朝霞市では、すでに約9千人を集める体験イベントを成功させています。光線を利用するビームライフルなどは、銃刀法の制限を受けずに子供から大人まで安全に競技の緊張感を味わえるのが特徴です。専門家は、地域が一体となって競技を盛り上げることは、大会後の賑わいを生む「正のレガシー」になると指摘します。レガシーとは、大会が社会や経済に残す長期的な遺産を指しますが、これを「負の遺産」にしないための自治体の挑戦は今が正念場です。
筆者の見解としては、こうした自治体の取り組みは単なる広報活動以上の価値があると感じます。かつての五輪では、巨大な施設が大会後に使われず「廃墟」化するケースが世界各地で問題視されてきました。しかし、今回のようにVRや簡略化された体験ツールを通じて住民が競技の「当事者」になることで、施設は五輪後も市民のスポーツ拠点として息づくはずです。1年後の本番に向け、私たちは観客としてだけでなく、競技を愛するプレイヤーとしても五輪を迎えられるかもしれません。