今、ビジネスの現場で欠かせない**コピー用紙(PPC用紙)**の価格が、約4年ぶりに上昇傾向にあるのをご存知でしょうか。2019年6月現在、代理店への卸価格は中心値で1キログラムあたり8.5円、率にして約7%も値上がりしています。これは2015年3月以来の上昇であり、実に10年ぶりの高値圏に突入している状況です。私たちの生活や企業の活動に深く関わるコピー用紙が、なぜこれほどまでに値上がりしているのか、その背景と今後の展望について、徹底的に解説してまいります。
今回の価格高騰の引き金となっているのは、輸入紙の先行した値上げにあります。国内市場のおよそ35%を占める輸入紙、特にアジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)やアジアシンボルといった大手メーカーは、採算改善のために2018年1月には既に大幅な値上げを表明し、これがほぼ市場に浸透しました。輸入品が値上がりした結果、相対的に割安感の出た国産品の需要が急増することになります。日本製紙連合会によると、2018年の国内出荷量は2年ぶりに増加し、2019年3月、4月もその勢いが続いている状況です。これは、コピー用紙が情報用紙全体のおよそ6割を占めていることからも、企業活動における根強い需要を裏付けていると言えるでしょう。
輸入紙の値上がりだけでなく、国内の需給バランスの悪化も、価格高騰に拍車をかけています。デジタル化の進展により、長期的にはコピー用紙の需要は減少傾向にありますが、供給側である製紙各社は供給過剰を解消するために生産能力の削減を進めてきました。さらに、昨年の西日本豪雨や北海道地震、そして今年に入ってからの製紙工場の火災といった自然災害やトラブルが相次いだことで、一部の工場が一時的に稼働を停止し、市場への供給量が絞られる事態となってしまいました。結果として、2019年4月の在庫率は前年同月比で10.7ポイントも低下し、市場では「需給逼迫」という、供給が需要に追いつかない状態が極めて強くなっているのです。
こうした状況を受け、王子ホールディングス傘下の王子製紙をはじめ、大王製紙、日本製紙、北越コーポレーション、三菱製紙といった主要な製紙会社が、昨年夏まで続いた原料のパルプ(木材などから取り出した繊維で、紙の主原料)価格の急騰や、物流費の上昇分を製品価格に転嫁するため、2019年1月出荷分から10%以上の値上げを相次いで打ち出しました。この原燃料価格や物流コストの上昇分を価格に反映させる動きが、現在の流通価格の上昇に繋がっているのです。SNS上でも、「コピー用紙が急に高くなった」「在庫がなくて困る」といった、価格上昇や品薄感を訴える投稿が増えており、今回の値上げが購買担当者の頭を悩ませている様子が伺えます。
企業購買担当者が知っておくべき「値上げドミノ」の現実
大手複写機メーカーが「安定供給のためには、値上げを受け入れるしかない」と判断したように、販売価格を左右する卸価格の上昇は、既に最終的な店頭価格にも影響を及ぼし始めています。リコージャパンは2019年6月4日にコピー用紙の値上げを実施しましたし、コクヨも2019年7月1日販売分から価格を引き上げるなど、販売側への転嫁が「値上げドミノ」のように広がりつつあるのです。企業向けのオフィス通販大手などでは、まだ価格を据え置いている企業も多いものの、この需給の引き締まり感と製造原価の上昇が続く限り、今後、オフィス通販やホームセンターなど、幅広いチャネルで販売価格が上昇する可能性は極めて高いと言えるでしょう。
編集者としての私の見解ですが、今回のコピー用紙の価格高騰は、単なる一時的な現象として片付けるべきではありません。長期的なデジタル化の流れの中で、製紙業界が生産体制の最適化(生産能力の削減)を進める一方で、自然災害や突発的なトラブルによって供給が不安定になるリスクは常に存在します。企業の購買担当者の方々は、この「需給逼迫」の現実を理解し、単価の安い輸入品への代替需要が国内品の需給をさらに逼迫させるという構造的な問題にも目を向けるべきです。今後は、コスト管理の観点からも、改めてペーパーレス化の推進や、情報用紙(PPC用紙や印刷用紙など情報の伝達に使われる紙の総称)の在庫管理の見直しなど、より戦略的な購買計画が求められる時代になるでしょう。安定したオフィス運営のためにも、最新の市場動向に敏感になり、早めの対策を講じることが重要になってまいります。