医師の働き方改革が変える日本の医療:効率化と意識改革が鍵

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医師の働き方改革を進める上で病院内での業務分担が重要視されている現状です。最も多く支持されたのは「複数主治医制」の導入で、回答者の41%がこれを選びました。続いて「勤務間インターバルやシフト制などの長時間労働の規制」が39%、「医師以外の職種への業務移管」が34%となり、いずれも病院単位で取り組める対策が上位を占めました。一方で、ICT(情報通信技術)の活用や地域医療機関間の連携を挙げた割合は、それぞれ23%と20%にとどまっています。

複数主治医制は、1人の患者に対して複数の医師が主治医として関わる仕組みで、過剰な負担を1人の医師に集中させない工夫です。国立大学病院では2023年度時点で80%の診療科がこの制度を採用しており、他の病院でも約46%が導入済みです。しかし、患者の中には「自分の主治医は1人であるべき」という固定観念が根強く、医師側からも「患者の考え方を変える必要がある」という声が上がっています。この仕組みを普及させるには、患者側の理解を深める取り組みも欠かせません。

勤務間インターバルは、業務終了後から次の勤務開始まで一定の休息時間を義務付ける仕組みで、医師の疲労軽減に寄与します。これも病院内の管理体制次第で比較的早く導入が進むでしょう。しかし、病院外との連携や診療方法の変革が必要な「地域医療連携」や「ICTの活用」については、回答者の関心が低いことが課題として浮き彫りになりました。

地域医療連携は、近隣の病院が診療科や病期ごとに役割を分担し、効率的に医療を提供する仕組みです。特に医師不足地域では有効な解決策とされますが、自院の診療科が縮小する懸念や、患者データの共有に伴う技術的・心理的な障壁が取り組みを妨げています。ICT活用についても、勤務医の24%に対し、開業医では16%と低調であり、オンライン診療の普及にも慎重な姿勢が目立ちます。2022年5月の厚生労働省のデータでは、オンライン診療の初診・再診割合は0.036%と、さらなる拡大の余地があります。

また、業務の一部を看護師や薬剤師に移す「タスクシフト」も、勤務医の35%に対し、開業医では27%にとどまりました。特に開業医は外部委託のコスト負担が課題となり、多くの業務を自ら抱え込む傾向があるとされています。

SNSでは「医師の働き方改革は医療の質を守るために必要不可欠」「複数主治医制は医師の負担軽減に効果的だが、患者の理解も大事」といった意見が見られる一方、「ICTや地域連携にもっと目を向けるべき」といった指摘も寄せられています。

医療現場が過酷な長時間労働に依存してきた構造は、もはや限界に達しています。病院内の働き方改革だけでなく、診療の効率化、地域間の連携強化、そして医師と患者双方の意識改革が不可欠です。今回の調査結果は、持続可能な医療提供体制の実現に向けた重要な道筋を示していると言えるでしょう。

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