2019年6月6日、名古屋税関が発表した4月の管内貿易概況(速報)は、中部地方の経済に明るい兆しを示しました。愛知、岐阜、三重、静岡、長野の中部5県における輸出額は、合計で1兆6,822億円に達し、前年の同じ月と比べて3%の増加となりました。この好調な伸びは、これで3カ月連続となり、地域の製造業の底力を感じさせる結果と言えるでしょう。
この輸出増加の主な原動力となっているのは、米国への輸出が非常に好調に推移している点です。国・地域別に見ると、米国向けは4,746億円と8%の大幅増を達成し、こちらも4カ月連続の増加を記録しています。特に、中部地域の主要産業である自動車は5%増の2,038億円と堅調な伸びを見せ、未来の産業の柱とも目される航空機類(航空機部品なども含む)に至っては、なんと47%増の285億円という驚異的な伸びを示しました。このデータからは、国際競争力を持つ日本のモノづくりが、世界経済の中心である米国市場でしっかりと受け入れられている様子が窺えます。
米国市場の力強い需要に加え、欧州連合(EU)向けもまた、輸出増加を後押しする要因となっています。EU向けは2,519億円で7%の増加となり、具体的には自動車や船舶類の輸出が大きく貢献しました。これは、2019年2月1日に発効した日EU・EPA(経済連携協定)による関税引き下げなどの効果も、今後徐々に現れてくる可能性があり、引き続き注目していく必要がありそうです。この地域経済の力強い流れは、日本のモノづくり産業全体の未来を担う重要な要素であると、私は考えています。
一方で、懸念材料も見られます。世界の工場とも呼ばれる中国向け輸出は、2,389億円で5%の減少となりました。特に、自動車部品は5カ月連続、半導体製造装置(半導体集積回路、つまりICなどを製造するための精密機械)は9カ月連続で前年を下回るという、低調な状況が続いています。これは、米中間の貿易摩擦の長期化や、中国経済の成長鈍化などが影響していると考えられ、今後の動向を注意深く見守る必要があるでしょう。
この名古屋税関の発表を受け、SNSでは「中部地方の製造業はやっぱり強いな」「自動車部品だけでなく航空機部品が伸びてるのは心強い」といった地域経済の底力に期待する声が多く見受けられました。その一方で、「中国の不振がどこまで響くのか心配だ」「貿易摩擦の影響は避けられないだろう」など、今後の世界経済の不透明性を懸念する意見も寄せられています。地域経済がこのまま上向きを維持するためには、米国とEUという二大市場の好調を維持しつつ、アジア圏、特に中国の需要回復を待つか、あるいは新たな市場を開拓する戦略が重要となるでしょう。