2024年9月現在、米国の投資会社アポロ・グローバル・マネジメントがパナソニックホールディングス傘下の車載機器会社「パナソニックオートモーティブシステムズ」を約4,000億円で買収する計画が進行中です。この買収の資金調達では、約1,000億円を韓国やインド、台湾、オーストラリアといったアジア各国の銀行から調達するという、これまで日本企業の買収ではあまり見られなかった手法が採用されています。この革新的な資金調達スキームが、国際的な融資の枠組みにおいて注目を集めています。
アポロは2023年3月にパナソニックHDと正式契約を結び、まず自社のファンドでパナオートの全株式を取得する形を取りました。その後、パナソニックHDが持ち株会社の株式20%を取得することで、パナオートの株式の一部を間接的に保持する形を維持します。この取引は2024年末に融資を受けた上で最終的な株式取得を完了する予定です。
買収額の4,000億円のうち、自社ファンドから約1,000億円を投入し、残り3,000億円は買収対象企業の資産を担保にしたLBOローン(レバレッジド・バイアウト・ローン)を利用して調達します。今回の特徴は、この3,000億円のうち1,000億円を韓国やインドなどのアジアの主要銀行から引き出す仕組みです。具体的には、幹事銀行である三井住友銀行やあおぞら銀行、横浜銀行が一旦全額を引き受けた後、アジアの銀行に1,000億円分の債権を譲渡する形が取られます。
この手法が選ばれた背景には、巨額の買収額に伴うリスク分散の必要性があります。2022年にマレリホールディングスが経営破綻した際、日本の主要銀行が多額の損失を被ったことが記憶に新しく、邦銀は単独で巨額融資を行うことに慎重になっています。今回、アジアの銀行を融資団に加えたことで、与信リスクを分散するとともに、アジアの銀行にとっても収益機会を提供する形となりました。
アポロはこれまでにも、インドのムンバイ国際空港への融資案件などで、アジアの銀行と連携した資金調達を行った実績を持ちます。今回もそのノウハウを活かし、邦銀とアジアの銀行をつなぐ役割を果たしたようです。こうした国際的な資金調達の枠組みは、アジアの金融市場の活性化にも寄与することが期待されています。
SNS上では、「アジアとの連携で新たな資金調達モデルが誕生」「リスク分散の先駆けとして画期的」といったポジティブな意見が多く見られる一方、「複雑なスキームが邦銀にとって負担にならないか」という懸念も寄せられています。
今回の事例は、欧州大手投資ファンドEQTが日本やアジア企業に投資するための新ファンドを設立する計画など、外資系ファンドの日本市場への関心が高まる中での重要な動きです。邦銀だけに頼らず、国際的な銀行を融資団に加える事例は今後さらに増えていく可能性があります。これにより、日本企業の買収や投資がより多国籍化し、金融市場のさらなるグローバル化が進むでしょう。