2024年9月2日、日本銀行が発表した8月の債券市場サーベイによると、市場の取引頻度や円滑さを示す「機能度判断指数(DI)」はマイナス23と、前回5月の調査のマイナス24からわずかに改善しました。この水準は2022年2月(マイナス21)以来の高水準で、6四半期連続の改善となります。
日銀は7月に国債買い入れの具体的な減額策を決定しており、これにより金利水準の形成を市場に委ねる方向へと舵を切っています。この方針は、中長期的に市場機能を改善させる効果が期待されていますが、今回の調査は決定直後の8月1日から7日の間に実施されたため、目に見える改善は限定的でした。さらに、8月上旬には日経平均株価が急落し、国内外の金融市場が動揺した影響で、債券市場も一時的に混乱が広がりました。このため、全体的な市場心理が悪化し、機能度の改善幅は小さかったようです。
この調査では、日銀が銀行や証券会社など72の調査先に市場の機能度について意見を聞きました。市場機能度を「高い」と評価した割合から「低い」と答えた割合を差し引いた値がDIとして算出されます。今回は回答の約9割が8月2日に発表された米雇用統計後に寄せられたものであり、市場心理が悪化している状況が数値にも反映された可能性があります。
特に取引コストの指標となる「ビッド・アスク・スプレッド」の判断DIはマイナス39と、前回から10ポイント悪化しました。これは、売買の際に提示される価格差が広がり、希望する価格での取引が難しくなっていることを示しています。この状況について回答者からは、「リスク心理の悪化により債券の流動性が低下し、市場機能の改善を評価するのが難しい」との声が寄せられました。
また、長期金利の先行きに関する予測では、新発10年債利回りが2024年度末には1.15%、2025年度末には1.25%、2026年度末には1.35%まで上昇するとの見通しが示されています。これらの数値は5月の調査時点と比べていずれも上昇しており、今後の金利動向が引き続き注目されます。
SNSでは、「日銀の国債買い入れ減額が市場機能を改善させる第一歩」との期待の声がある一方、「取引コストの増加や流動性の低下はリスク要因」とする慎重な意見も多く見受けられます。今回の調査結果は、債券市場が回復に向かう過程にある一方で、短期的な市場心理や流動性の課題が依然として残ることを示唆しています。
中長期的な市場の安定には、日銀と市場参加者の連携が重要となるでしょう。引き続き、政策の進捗と市場の反応を注視する必要があります。