米国利下げ観測が揺らす世界市場:為替と株式の行方に注目

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2024年9月現在、米国の金利先物市場では、年内に1%以上の利下げが行われるという観測が急速に広がっています。特に、7月の米雇用統計が利下げ期待を後押しし、円高・ドル安の急進や株式市場の調整につながったことが背景にあります。ただし、この利下げ観測については「行き過ぎではないか」という慎重な見方も出始めており、修正が加わる場合には市場が再び大きく動揺する可能性もあります。

金利先物市場の動きを分析する「フェドウォッチ」によると、2024年8月末時点で年内に1%以上の利下げが行われる確率は約7割に達しました。これは、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を皮切りに、残る3回の会合で少なくとも0.25%ずつの利下げが実施され、さらにどこかで0.5%の利下げが行われるというシナリオを意味します。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)の公式見解では、年内の利下げは0.25%1回が妥当とされており、市場の予測とのギャップが生じています。

利下げ期待を高めたきっかけとなったのが、8月2日に発表された7月の米雇用統計です。このデータで失業率が4.3%に上昇し、景気後退の兆しとされる「サーム・ルール」に該当したことで、市場心理が悪化しました。サーム・ルールとは、直近3カ月の平均失業率が過去1年の最低値を0.5ポイント上回る場合、景気後退の可能性が高いとされる指標です。この発表直後、ドルは急落し、円は一時1ドル=141円60銭台まで急騰しました。同時に株式市場も影響を受け、日経平均株価は過去最大の下げ幅となる4,451円安を記録しました。

ただし、この利下げ観測が過度であるとの見解も増えています。英バークレイズは、「市場が織り込む利下げ幅は現実とかけ離れている」と指摘し、米バンク・オブ・アメリカも年内の利下げは0.25%を2回程度と予想しています。同様に、外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は、最近発表された米経済指標が底堅さを示しており、景気後退には至らないとの見解を示しました。

今後の焦点は9月6日に発表される8月の米雇用統計です。この結果次第で利下げ観測が修正される可能性があり、為替や株式市場に大きな影響を与えるでしょう。市場予測では、非農業部門の就業者数が16万5千人増加し、失業率は4.2%に改善する見込みです。これが現実となれば、利下げ予測が0.75%程度に縮小する可能性があります。

一方で、仮に雇用統計が予想を下回った場合、ドル安・円高が進み、1ドル=140円付近まで動く可能性も指摘されています。また、円高が進行したとしても、米国株が堅調であれば日本株の独歩安は回避できるとの見方もあります。日経平均株価は年末にかけて4万円に近づくとの楽観的な予測もあり、市場には複数のシナリオが存在します。

9月11日には米消費者物価指数(CPI)が、17~18日にはFOMCと新たなドットチャートが公表される予定です。これらのデータ次第で利下げ観測が再び揺らぐ可能性があり、市場は上下に大きく振れるリスクを抱えています。SNSでは「利下げ期待で米国株は追い風だが、過度な期待は危険」「為替の乱高下で日本企業の収益に影響が出ないか心配」といった声が飛び交っています。利下げの織り込み度がどのように変化していくか、当面の注視が必要です。

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