「愛することを始めよう。そして大きな愛を持とう」。そんな力強い、あるいは少し気恥ずかしさを覚えるような言葉から始まる一冊が、今、多くの読者の心を揺さぶっています。文化人類学者である上田紀行氏が2019年07月27日に世に送り出した『愛する意味』は、著者が自ら「おせっかいな本」と称するほど、私たちの内面に深く踏み込んでくる挑戦的な書物です。
現代を生きる私たちは、愛という極めてプライベートで神聖な領域に、他者から口を出されることを嫌う傾向にあるかもしれません。しかし、本書が放つメッセージは、単なる精神論や道徳の押し付けには留まりません。その言葉の裏側には、現代社会が抱える歪みや、人々の間に蔓延する孤独を鋭く見抜いた「時代診断」が、確かな説得力を持って横たわっているからです。
SNS上では、この記事が公開された2019年07月27日前後から、「愛という言葉の重みが変わった」「自分を愛することから始めたい」といった、共感と内省の声が次々と上がっています。効率や損得が重視される世の中で、あえて「愛」という古風とも取れるテーマを真っ向から論じる姿勢が、先行きの見えない不安を抱える多くの現代人の琴線に触れたのでしょう。
本書の核となるのは、愛を単なる「感情」としてではなく、一つの「発想の転換」として捉える視点です。ここで言う「愛」とは、恋愛感情のみを指すのではありません。自分自身を肯定し、他者と深く繋がろうとする意志そのものを指しています。これは、人間関係が希薄化し、個々人が孤立しがちな現代において、非常に重要な「世直し」の第一歩と言えるのではないでしょうか。
私個人の意見としては、今の時代にこそ、こうした「おせっかい」が必要だと強く感じます。私たちは自由を手に入れた一方で、他者との関わり方を忘れ、過度な自己責任論に疲弊しています。自分の殻に閉じこもるのではなく、あえて「愛すること」という能動的なアクションを起こすことで、冷え切った社会に温かな風を吹き込めるという著者の主張には、深い希望が宿っています。
「時代診断」という言葉は少し難解に聞こえるかもしれませんが、これは医師が患者を診察するように、現代社会特有の「病理(うまくいっていない部分)」を分析することを意味します。上田氏は、私たちが感じている息苦しさの正体を、愛の欠如として鮮やかに描き出しました。この本は、自分自身を見つめ直し、社会との繋がりを再構築するための、珠玉のガイドブックとなるはずです。