地方金融グループであるトモニホールディングス(トモニHD)は、2019年6月6日に発表した第4次中期経営計画で、2023年3月期の純利益目標を110億円に設定しました。これは2019年3月期の実績から9億円の上乗せとなる、意欲的な数値目標です。掲げられたビジョンは「変革し進化する広域金融グループ」。この達成に向けて、傘下の徳島銀行と大正銀行が2020年1月に合併することを機に、関西エリアでの攻勢を大幅に強める戦略が描かれています。
この中期計画の柱となるのが、経費節減と取引先の拡大です。特に、徳島銀行と大正銀行の合併に伴うシステム関連費用として、すでに2019年3月期に16億円、そして2020年3月期には21億円を計上しています。トモニHDの中村武社長は、2019年3月期の決算会見において、このシステム費用37億円について「第4次経営計画の4年間で十分に回収可能と考えている」と発言されており、合併による効率化が収益向上を果たすための重要なカギとなるでしょう。特殊要因を除けば「まずまずの決算」との見解も示されており、将来への強い自信がうかがえます。
地域商社的な活動で地元企業をサポート
経費の削減と並んでグループが重要視しているのが、業務の変革です。トモニHDは自らを「地域商社的金融グループ」と位置付け、本業である預金や貸し出しに加えて、取引先企業の販路拡大を積極的にサポートしています。その具体例として、香川県や徳島県の特産品を地域外で販売する「トモニ市場」を展開中です。この取り組みは、愛媛県八幡浜市の道の駅「八幡浜みなっと」や東京などで行われており、地域を越えた連携の強みを生かして、地元企業の成長を強力に後押しする姿勢を示しています。
また、高齢化の進展と人手不足が深刻化する中で、地元企業の雇用維持を目指し、事業承継やM&A(合併・買収)のサポートにも注力することで、サービスの充実を図っています。M&Aとは、企業の経営権の取得や、複数の企業が一つになることを指す専門用語で、事業の継続や発展を目的として行われます。このような付加価値の高いサービスを提供することで、金融グループとしての存在価値を高めていく考えです。
関西・大阪地区を戦略的エリアに位置付け
トモニHDが特に力を注ぐのが、取引エリアの拡大です。大阪府、兵庫県(淡路島を除く)、京都府を含む大阪地区を「戦略的エリア」と位置付け、この地域での攻勢を強めています。2023年3月期末時点でのトモニHD全体の貸出金残高目標は3兆円ですが、そのうち実に3分の1にあたる1兆円を大阪地区が占める計画です。2025年には大阪万博の開催も控えており、同地区への期待値は非常に高いものがあります。
実際、2016年3月末から2019年3月末までの3年間で、大阪地区の貸出金残高は2,082億円増加し、8,949億円に達しました。同時期のグループ全体の貸出金残高の増加額は4,063億円で2兆8,084億円となっており、大阪地区での増加分が全体の5割超を占める結果となっています。この勢いをさらに加速させるため、一層の営業基盤の強化を目指し、新規出店も検討していく模様です。
「キングギドラ型」体制でノウハウを共有
グループ内での連携を強化し、貸し出しの増加へつなげる体制も整備中です。具体的には、住宅・不動産関連の融資に強みを持つ大正銀行と、事業性融資、すなわち企業への運転資金や設備投資資金などの融資にノウハウがある徳島銀行が、それぞれの知識や技術を共有します。これにより、大正銀行における事業性融資の推進を支援する狙いがあるのです。
トモニHDの中村社長は、この体制を「キングギドラのような在り方」と表現されています。本体は効率化を徹底的に追求しつつ、顧客との接点においては複数行体制をとるという、ユニークな戦略です。この「キングギドラ型」の連携体制が、4年間の新たなステージにおいて、いかに収益力を発揮できるか、多くの注目が集まることでしょう。この記事が公開された時点では、地方銀行の再編や広域連携に関するSNSでの議論も活発であり、トモニHDのこの革新的な挑戦は、金融業界における新たなモデルとして大きな反響を呼ぶに違いないでしょう。