2019年7月27日、特殊鋼の大手メーカーである大同特殊鋼から、2019年4月1日から2019年6月30日までの連結決算が公表されました。その内容は、主力事業の稼ぐ力を示す営業利益が前年同期に比べて25パーセントも減少し、63億円にとどまるという厳しい現実を突きつけるものです。
ここで言う「営業利益」とは、企業が本業である鉄鋼製造などを通じて得た利益を指します。この数字が大きく落ち込んだ背景には、世界最大の自動車市場である中国における景気の停滞が、色濃く影を落としていると推測されるでしょう。
特に大きな打撃となったのは、自動車向けの特殊鋼鋼材や磁石製品の受注が減速した点です。特殊鋼とは、通常の鉄にニッケルやクロムなどの元素を配合し、硬さや耐熱性を極限まで高めた高機能な素材のこと。自動車の心臓部や駆動系には欠かせない存在なのです。
SNS上でも今回の発表に対し、「中国の自動車販売不振の影響が、いよいよ日本の素材メーカーの根幹にまで波及してきたか」といった懸念の声が広がっています。グローバル経済の冷え込みは、私たちの想像以上に速いスピードで実体経済を侵食しているのかもしれません。
本業苦戦の一方で純利益は急増?その裏側にある戦略的判断
一方で、最終的な利益を示す「純利益」については、驚くべきことに前年比で7割も増加し、94億円を記録しました。本業が苦戦する中でなぜこのような数字が出たのか、その理由は2019年4月1日から6月30日の間に計上された「特別利益」に隠されています。
同社は川崎工場の圧延施設の一部を売却しており、これによって74億円もの臨時収入を得ました。今回の純増益は、あくまで資産を現金化したことによる一時的な押し上げ効果であり、手放しで喜べる状況ではないというのが専門家の冷静な見方ではないでしょうか。
編集部としては、今回の決算から、大手メーカーが直面している「構造転換の過渡期」を強く感じます。単に景気の波に左右されるだけでなく、資産の最適化を進めながら次なる成長の種をどこに見出すのか、経営陣の手腕が厳しく問われている段階と言えるでしょう。
2020年3月期の通期見通しについては据え置いていますが、今後の情勢変化から目が離せません。厳しい環境下でいかに攻めの姿勢を維持できるのか、日本を代表する素材メーカーが持つ底力の真価が、今まさに試されているのです。