アメリカのテクノロジー大手Appleが、次期iPhoneの生産をインドで開始したことが明らかになりました。これには、これまで主に中国で製造されていた上位モデル「Pro(プロ)」も含まれており、同社が地政学リスクの高まりを背景に生産拠点を多様化させていることが伺えます。従来、インドでは旧機種や下位モデルの製造に限られていましたが、今回の動きはその方針を大きく転換するものです。
2023年には約3000万台、2024年前半には約1800万台のiPhoneがインドで生産され、インド国内向けだけでなくアメリカなどへの輸出も行われました。これはAppleがインドを中国以外での主要な製造拠点と位置づける戦略の一環であり、同時に急成長するインド市場を積極的に開拓する狙いもあるとされています。
香港の調査会社カウンターポイントのイバン・ラム氏は、「インドは今後数年にわたり、最終製品の組み立て拠点としての成長が中心になる」と分析しています。ただし、付加価値の高い部品の生産は依然として中国に集中しており、インドの製造能力やインフラ水準、人材の熟練度はまだ中国には及ばないと指摘しました。
インドでの生産拡大には課題も伴います。新しいiPhoneの大半は引き続き中国で製造されており、インドでの製造はまだ限定的です。部品サプライヤーの移転遅れや生産技術の習熟不足がその要因となっています。Appleの主要サプライヤーである台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)の劉揚偉会長は、インド工場の歩留まり(良品率)が一部で報じられた「50%より確実に高い」と述べたものの、具体的な数値は明らかにしませんでした。
SNS上では、「インドでのiPhone生産拡大は大きな変化」「中国からのシフトは地政学的にも興味深い」といった意見が多く見られる一方で、「インド生産が品質にどう影響するのか気になる」という声もあります。また、インド市場の成長性を歓迎する声や、地元の雇用創出への期待も広がっています。
Appleの今回の決定は、グローバルな地政学的リスクへの対応と成長市場での競争力強化を両立させる挑戦と言えるでしょう。インドでの製造がどこまで拡大し、中国への依存をどの程度削減できるのか、今後の展開に注目が集まります。