ショルツ政権に逆風、極右政党躍進の背景とドイツ政治の行方

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2024年9月現在、ドイツのショルツ政権が厳しい局面に立たされています。9月1日に投開票された東部2州の議会選挙では、ショルツ首相率いる与党・ドイツ社会民主党(SPD)が惨敗しました。特にチューリンゲン州では、移民排斥を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が得票率32.8%で第1党となり、第2次世界大戦後初めて極右政党が州議選レベルで首位に立つという歴史的な出来事が起きました。この結果は、2025年秋に予定される総選挙に向けて不透明感を強めています。

ショルツ首相はこの結果について「苦々しい」と述べ、党内からは「国民の生活不安に寄り添う政策が必要だ」といった焦りの声が上がっています。実際、SPDの得票率はザクセン州で7.3%、チューリンゲン州で6.1%と、それぞれ過去最低の水準に落ち込みました。また、連立を組む他の政党も苦戦しており、環境政党の「緑の党」はチューリンゲン州で得票率3.2%、自由民主党(FDP)は1.1%にとどまり議席を確保できませんでした。

一方で、AfDの躍進は注目に値します。ザクセン州では中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)がかろうじて首位を守ったものの、得票率は31.9%で、AfDが30.6%と僅差で追い上げています。AfDは移民政策の厳格化やウクライナへの軍事支援反対を掲げ、地元経済の停滞や移民流入への不満を取り込む形で支持を拡大しました。チューリンゲン州のAfD党首であるヘッケ氏は過激な言動で知られ、過去にはナチスのスローガンを使用して罰金を科された経緯もあります。同党はドイツ連邦憲法擁護庁から監視対象に指定されていますが、それでも支持を拡大しているのです。

背景には、旧東ドイツ地域が抱える長年の経済格差や地方の過疎化が影響しています。特に移民政策が市民の生活を置き去りにしているとの不満が強く、公共放送ARDの世論調査では「経済状況が良い」と答えた人が前回選挙からほぼ半減しました。さらに、8月末に西部ゾーリンゲンでシリア人難民申請者による無差別殺傷事件が発生したことも、AfDへの追い風となっています。

また、新たに結成された左派新党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」もチューリンゲン州で10%以上の得票率を記録し、SPDを上回りました。この党もAfDと同様に移民制限やウクライナ支援反対を掲げており、反移民を掲げる政党への支持が合わせて4割以上に達する結果となりました。

今後の焦点は、ショルツ政権が有効な政策を打ち出し、支持率を回復できるかどうかです。しかし、環境政策や経済対策、ウクライナ支援を巡る意見の不一致が連立政権内で続いており、その足並みの乱れが国民の不信感をさらに助長している状況です。総選挙が行われる2025年9月までに、この混乱が続けば、ショルツ政権は「レームダック化(政治的影響力の低下)」のリスクを避けられないでしょう。

SNSでは、「ドイツで極右政党がここまで支持を広げるのは危機的状況」「ショルツ政権は国民の声をもっと聞くべきだ」といった意見が多く見られます。一方で、「AfDの躍進は移民政策の問題を無視できないことを示している」と冷静な分析を示す声もあります。

ドイツの政治情勢は、ヨーロッパ全体やウクライナ支援の行方にも影響を与える重要な問題です。この動向を軽視することはできず、今後の展開に世界的な注目が集まっています。

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