2019年6月6日、フランス北西部コルビルシュルメールで、アメリカのドナルド・トランプ大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領との首脳会談が開催されました。第二次世界大戦におけるノルマンディー上陸作戦から75周年を記念する式典に合わせたこの会談では、緊迫する国際貿易情勢、特にアメリカと中国の間の貿易摩擦が主要な議題の一つとなりました。
会談後の発言で、トランプ大統領は、中国からの輸入品すべてに追加関税を課す可能性のある「第4弾」の制裁関税について、6月下旬に大阪で開催されるG20サミット、すなわち20カ国・地域首脳会議で中国の習近平国家主席と会談する意向を示した上で、その発動判断は「おそらくG20後のどこかのタイミングになる」との見解を明らかにしました。これは、G20という重要な国際会議の場を利用して、米中間の貿易交渉の展開を見極めるという、戦略的な姿勢を示していると言えるでしょう。
この第4弾の追加関税は、金額にしておよそ3000億ドル(約32兆円)分もの中国製品が対象となる見込みで、多くのアメリカ国民が日常的に購入する消費財も含まれているとされています。もし実際に発動されれば、輸入品の価格上昇を通じて、アメリカの消費者自身が経済的な負担を強いられる可能性が高まるため、その動向は世界中から注目されています。トランプ大統領は会談に先立ち、「とても興味深いことが起きている」「適切なタイミングで(発動を)そうする」と語る一方、「中国はディール、つまり貿易協定を強く望んでいる」とも説明しており、中国側の出方次第で判断が変わる可能性も示唆しているようです。
一方、ホスト国であるマクロン大統領は、アメリカの通商政策に対して、国際的な「ゲームのルールを尊重すべきだ」という考えをトランプ大統領に伝えたと報じられています。マクロン大統領のこの発言は、アメリカが一方的に仕掛ける一連の「貿易戦争」が、世界経済全体にとっての大きな下振れリスク、つまり景気後退や不況につながりかねない要因となっているという認識から、トランプ大統領の行動を強く牽制した形です。両首脳は貿易に関する議論では、残念ながら平行線をたどったと見られています。フランスは、同年8月に主要7カ国首脳会議(G7サミット)を主催する予定であり、マクロン大統領はこの貿易政策の問題をG7でも主要なテーマとして取り上げる方針を表明していますが、トランプ大統領がG7に出席するかどうかは現時点では不明です。
トランプ大統領の「G20後」判断示唆というニュースは、直ちにソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上でも大きな反響を呼びました。「結局、またギリギリまで引っ張るのか」「G20での会談が事実上の最終決戦の場になるのでは」といった、緊張感を示すコメントが多く投稿されています。特に、関税が消費者に与える影響を心配する声や、「国際ルールを無視するやり方は問題だ」と、マクロン大統領の姿勢を支持する意見も目立ち、世界経済の安定性に対する懸念が広がっていることが伺えます。アメリカ経済の成長を重視するトランプ政権の政策は、時には国際的な調和よりも自国の利益を優先する**「アメリカ・ファースト」**の理念に基づいているため、このような摩擦は避けられないのかもしれません。
私見ではありますが、国際貿易は、単にモノやサービスを交換する経済活動に留まらず、各国間の信頼関係を築くための重要な外交ツールでもあります。短期的な自国利益の追求が、長期的には世界経済全体の不安定化を招き、結果として自国の不利益につながる可能性もあるため、ルールを尊重し、多国間で協力し合える協調的なアプローチこそが望ましいと考えられます。マクロン大統領が示したように、国際的なルール、例えば世界貿易機関(WTO)などが定める規律を遵守し、対話を通じて問題を解決していく姿勢が、今こそ国際社会全体に求められているのではないでしょうか。
イラン情勢:核保有阻止の目標は共有も、手段で異なる立場の行方
貿易問題で意見の相違が見られた米仏首脳会談ですが、緊張が高まるイラン情勢に関しては、トランプ大統領が「フランスと意見の相違はない」と発言し、マクロン大統領も「イランの核保有を阻止するという目標は共有している」と応じています。核保有国が増える、いわゆる核拡散を防ぐという大目標については、両国間で一致していることが確認できたと言って良いでしょう。しかしながら、イランの核開発を制限する多国間合意、通称「イラン核合意」に対する両国の立場には、大きな隔たりが存在しています。
アメリカは、2018年5月にこのイラン核合意から一方的に離脱し、対イラン制裁を再開しています。これに対し、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国は、核合意に引き続きとどまる姿勢を示しており、この合意こそがイランの核開発を制限する有効な手段であるという認識を維持しています。目標は同じであっても、それを実現するための「手段」において両国の立場が大きく異なっているという現状は、イラン情勢の今後の展開において、国際社会の足並みの乱れにつながりかねない重要なポイントと言えるでしょう。世界中が注視する米中貿易問題だけでなく、中東の平和と安定を脅かすイラン情勢についても、米仏両国を含む主要国の更なる対話と協調が切に望まれます。