2024年9月2日、イスラエルの主要労働組合が全国規模でゼネストを実施し、イスラム組織ハマスに拘束されている人質の早期解放を政府に求めました。このストライキは、ネタニヤフ政権がガザでの停戦交渉で強硬姿勢を続ける中で、国民の不満が大きく表出したものです。特に、8月31日にハマスによる人質6人の殺害が確認されたことが、抗議行動の直接的な引き金となりました。
ゼネストの影響は全国に広がり、鉄道やバスの運行停止・縮小、ベングリオン国際空港での旅客機出発の一部中止が発生しました。テルアビブを含む多くの自治体では公共サービスが停止し、大学や銀行も休業しました。病院は業務を縮小し、テルアビブ中心部ではデモ隊が幹線道路を封鎖するなど、大規模な抗議が行われました。労働裁判所は同日午後までにストを終了するよう命じましたが、国民の不満は収まる気配がありません。
2023年10月のハマスによる奇襲以降、約250人の人質が連れ去られ、そのうち100人以上が未だ拘束されたままとされています。さらに、既に死亡が確認された人質も少なくない状況です。新たな人質の殺害が確認される中、ネタニヤフ首相は「ハマスは合意を望んでいない」と非難しましたが、国民の間では「人質解放を最優先に、停戦に応じるべきだ」との声が高まっています。
9月1日には人質の家族団体が中心となり、全国各地で大規模なデモが行われました。これに加え、ガザでの戦闘により犠牲者が4万人を超え、人道被害が深刻化していることから、国際社会でも停戦を求める声が高まっています。ガザ中部ではポリオワクチン接種のため一時的な戦闘停止が実現しましたが、停戦は局地的なものにとどまり、9月1日にはガザ北部の学校への攻撃で11人が死亡するなど、戦闘の影響は続いています。
イスラエル政府は引き続きハマスの壊滅を掲げ、ガザでの軍事作戦を継続しています。ネタニヤフ首相は停戦後もガザをイスラエルの管理下に置く方針を示し、ハマスが求める全面的な軍撤退には応じない姿勢を貫いています。この強硬路線には連立与党内の極右政党の影響が大きく、「宗教シオニズム」党のスモトリッチ財務相はストライキの停止を裁判所に求めるなど、人質解放を巡る国民の声に耳を傾けない姿勢が浮き彫りとなっています。
一方で、アメリカのオースティン国防長官はイスラエルのガラント国防相と電話協議を行い、人質解放を最優先に早期停戦を目指す方針を確認しました。ガラント国防相はネタニヤフ首相と対立を深めており、停戦の条件としてガザに軍駐留を求める首相の方針に反対しています。
SNSでは、「人質解放を最優先にすべき」「ゼネストは国民の切実な訴え」といった意見が広がる一方で、「ネタニヤフ政権の強硬姿勢が事態を悪化させている」との批判も強まっています。ガザでの戦闘が長期化する中、国際社会と国内世論がイスラエル政府に与える圧力は増すばかりです。ネタニヤフ政権がどのような解決策を見出すのか、その動向が注目されます。