2024年9月2日、中国政府は台湾産の柑橘類「ブンタン」の輸入を同日から再開すると発表しました。また、福建省の住民による台湾離島・金門島への観光も近く再開する方針を示しました。この動きは、中国が台湾との関係改善を模索する一方で、台湾の民進党政権に揺さぶりをかける狙いがあるとみられます。
福建省は台湾の対岸に位置し、同省アモイ市から金門島まではわずか数キロメートルという近距離にあります。しかし、中国は2019年、台湾への個人旅行を停止しました。これは、2016年に民進党の蔡英文政権が発足し、中台関係が悪化したことを受けた措置でした。今回、中国文化観光省は8月30日に福建省住民による金門島観光を再開すると発表し、国民党や金門島の地元関係者からの要望に応じた形となりました。
さらに、中国は台湾産ブンタンの輸入再開も発表しました。中国税関総署は2022年からブンタンの輸入を停止していましたが、台湾東部・花蓮県の関係者らからの要請が続いたことで再開に至ったとしています。中国台湾事務弁公室の陳斌華報道官は、この決定を「中台交流促進の一環」と位置付け、「台湾独立に反対すれば中台は一つの家族だ」と述べました。
中国がこのタイミングで台湾との接触を増やしている背景には、2024年1月に予定される台湾総統選挙があると考えられます。中国は、与党・民進党の頼清徳総統を「独立分子」と見なし敵視しています。一方、対中融和路線を掲げる国民党とは関係を深め、台湾内での政治的影響力を強化しようとしています。
中国の習近平政権は、台湾統一を事実上の国家目標に掲げており、頼政権発足直後の2024年5月には台湾全域を包囲する形で軍事演習を実施しました。この演習には中国海警局も参加し、台湾への圧力を一段と強めています。
SNSでは、「中国のブンタン輸入再開は台湾農家への恩恵か、それとも政治的罠か」といった議論が巻き起こっています。一方で、「金門島観光再開は中台融和の兆しになるのか」という期待の声もある一方、「民進党政権への分断工作に注意すべきだ」と警戒する意見も見られます。
中国のこれらの動きは、台湾総統選挙を前にした外交戦略の一環であることは明白です。ブンタン輸入や観光再開といった一見友好的な措置が、台湾内の世論や政権運営にどのような影響を与えるのか、引き続き注目が必要です。