私たちの暮らしに欠かせないスマートフォンや電気自動車のバッテリーには、多くの希少な金属が使われています。これら「レアメタル」を効率よく取り出す技術は、資源の少ない日本にとって非常に重要な課題です。2019年07月30日、宮崎大学の大島達也教授らの研究グループと化学メーカーの日本ゼオンが、この分野に革新をもたらす画期的な共同研究成果を発表しました。
これまで金属を回収する際には、「溶媒抽出法」という技術が広く用いられてきました。これは、水に溶けた金属を特定の液体に溶かし出して分離する手法です。しかし、これまではクロロホルムなどの「ハロゲン系有機溶媒」が使われることが一般的でした。これらの薬品は金属を溶かす能力には優れているものの、人体への毒性が強く、環境負荷も大きいという深刻なデメリットを抱えていたのです。
環境負荷を劇的に抑える秘密兵器「CPME」の可能性
そこで今回、研究チームが注目したのが、日本ゼオンが開発した「シクロペンチルメチルエーテル(CPME)」というエーテル系の溶媒です。このCPMEは、従来の有害な溶媒とは異なり、非常に安定した性質を持っています。水と混ざりにくく回収が容易であることに加え、過酸化物が発生しにくい安全設計が特徴です。まさに、研究室の常識を覆すようなクリーンな溶媒として期待が寄せられているのでしょう。
専門用語で「疎水性(そすいせい)」と呼ばれる、水と馴染まない性質が金属回収には不可欠です。CPMEはこの疎水性に優れており、かつ金属と結びつく抽出剤を効率よく溶かすことが可能です。今回の開発により、これまで「危険な薬品を使わなければならない」と諦めていたプロセスの代替が現実味を帯びてきました。産業界の「グリーンケミストリー(環境に配慮した化学)」の流れを加速させる一歩と言えます。
SNSで広がる期待の声と「持続可能な社会」への編集者の視点
SNS上では、このニュースに対して「研究室での実験がより安全になるのは素晴らしい」「リサイクルのコストや安全性が改善されるのは大歓迎だ」といった好意的な意見が数多く投稿されています。特に、日常的に化学薬品を扱う研究者や学生からは、健康リスクを抑えられる点に熱い視線が注がれているようです。技術の進歩が、働く人の安全性も同時に高めていく好例ではないでしょうか。
編集部としては、今回の発見が単なる技術革新に留まらない意義を持っていると感じています。資源循環型社会、いわゆるサーキュラーエコノミーを実現するためには、リサイクル工程そのものがクリーンである必要があります。毒性の強い溶媒を使わずにレアメタルを循環させることができれば、それは真の意味での「サステナブルな資源活用」に他なりません。日本の研究力が示したこの答えに、大きな誇りを感じます。
今後は研究室レベルの実験だけでなく、大規模な工場での実用化に向けた検証が進む見込みです。2019年07月30日の発表を境に、金属回収の現場はより安全で、地球に優しい形へと姿を変えていくに違いありません。この技術が世界中に広がり、環境保護と産業発展が両立する未来が来ることを、心より願ってやみません。