2024年9月現在、信越化学工業が窒化ガリウム(GaN)を使用した次世代半導体製造用の大型基板の開発に成功しました。この新技術により、従来のシリコン基板と同等の面積で、生産性が2倍以上向上するとされており、次世代通信規格「6G」やデータセンター向け半導体の製造コストが大幅に削減される見込みです。
今回大型化に成功したのは、GaNを使用した化合物半導体の製造に不可欠な基板です。GaNは高い周波数帯域での安定した通信や、大量の電力制御が可能で、6G通信やデータセンターのパワー半導体などで需要が見込まれています。しかし、高品質かつ大面積の基板製造の難しさが普及の妨げとなっていました。
信越化学は独自技術である「QST基板」をベースに、GaN結晶を作る技術を開発しました。このQST基板は窒化アルミニウムなどを材料に用いており、従来のシリコン基板より薄く、より高品質なGaN結晶の製造を可能にしています。特に今回開発された口径300ミリメートルのQST基板は、従来品の約2.3倍の面積を持ち、シリコン基板と同等の面積でありながら、より効率的な製造を実現します。
QST基板はシリコン基板よりも割高ですが、一枚から作れるデバイス数が多いため、半導体の製造コストを大幅に削減できると見られています。また、既存の加工装置をそのまま使用できるため、導入の障壁が低い点も特徴です。
信越化学はすでにサンプル品の出荷を開始しており、10億円以上を投じて数年以内に量産体制を整える予定です。最初は通信やデータセンター向けに使用される見通しですが、将来的には品質をさらに向上させ、電気自動車(EV)向けなど幅広い用途にも対応可能としています。
フランスの調査会社ヨール・インテリジェンスによると、化合物半導体基板の市場規模は2029年までに2023年比で2.6倍となる33億ドル(約4800億円)に達する見込みです。特にEV向けパワー半導体用基板の成長が大きいとされています。現時点では製造が比較的簡単な炭化ケイ素(SiC)基板がEV向け市場をリードしていますが、物理的特性で優れるGaN基板の普及が進むことで、競争が激化する可能性があります。
日本国内でも、三菱ケミカルグループや住友化学などがGaN基板の高品質化や大型化に向けた研究開発を進めており、次世代半導体市場での競争が激しさを増しています。SNSでは、「日本企業の技術力がGaN市場で世界をリードするかもしれない」「6GやEVに欠かせないGaN基板の開発は未来を切り拓く」といった期待の声が広がっています。
信越化学の技術革新は、次世代半導体のコスト削減や性能向上に寄与するだけでなく、6G通信やEV市場のさらなる発展を後押しするでしょう。今後の市場動向と技術進化に注目が集まります。