🔥米中貿易戦争がアメリカ経済の足かせに!FRB地区連銀報告が示す「関税」の深刻な影響と今後の金融政策【2019年6月最新】

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2019年6月5日、米連邦準備理事会(FRB)が公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)から、米中の貿易摩擦、すなわち貿易戦争がアメリカの景気拡大の重しになっている状況が鮮明になりました。この報告書は、2019年4月から5月中旬にかけての米経済を「緩やかに拡大」と総括したものの、企業の間では対立の激化を受けて投資を控えたり、関税の上昇分を販売価格に上乗せしたりする動きが広がりつつあることが報告されています。

この時点で、トランプ米政権が不法移民対策を理由にメキシコに対する関税発動を表明しており、これが実行されれば、企業の事業環境はさらに厳しくなることは避けられず、ひいては金融政策にも大きな影響を与えるでしょう。ベージュブックは、2019年6月18日~19日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の重要な判断材料として、全米12の地区連銀から集められた経済の現状がまとめられているため、市場関係者はその内容を特に注視しています。

貿易戦争の深刻度を示す「関税」言及の急増

今回の報告書で市場参加者が特に注目したのは、「貿易戦争に関する記述の多さ」でした。米プルデンシャル・ファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏もこの点を指摘しています。報告書の中で「関税」という言葉が登場した回数は37回に上り、これは2019年4月公表の前回報告と比べて約2倍の増加です。RBCキャピタル・マーケッツによると、この回数は2018年12月以来で最も多く、貿易摩擦の深刻化が企業心理に与える影響の大きさを物語っています。

アトランタ連銀からは、地元の輸送事業者による切実な声が伝えられました。「関税のせいで売上高が目標に届かない事態に備えて、投資の抑制や人員削減の計画を立てた」という報告は、景気の先行きに対する企業の警戒感を如実に示しています。さらに、さらなる関税引き上げを懸念して、貨物の前倒し輸送を行う動きも見られており、これは下期に需要の反動減が生じる可能性を警戒していることの裏返しでしょう。

また、ボストン連銀の報告では、自動車業界において、貿易政策の不透明さを理由に新モデルの発売延期が決定し、結果的に投資が削減された事例が紹介されました。米中貿易戦争の影は、すでに企業の具体的な経営判断に及び、設備投資という景気拡大のエンジンを冷やし始めているのです。
Getty Images

コストの価格転嫁と企業収益への圧力

関税の引き上げに伴い、そのコストを最終的に消費者へ転嫁する動きも広がりつつあります。フィラデルフィア連銀の製造業からの声として、「10%の関税であれば供給網(サプライチェーン)内で何とか吸収できたが、25%にもなると、消費者への価格転嫁を真剣に検討せざるを得ない」という状況が報告されています。サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、そして消費者の手に届くまでの物流や商流のネットワーク全体を指す専門用語です。ここでのコスト増は、最終的に小売価格に跳ね返る可能性が高いでしょう。

実際に、アメリカ企業への影響は広範囲に及んでいます。「100円ショップ」の米国版とも言える1ドルストアを運営するダラー・ツリー社のゲイリー・フィルビン最高経営責任者(CEO)は、2019年5月30日の決算会見で、関税が発動された場合の影響について、「私たちの事業と、とりわけ消費者に衝撃をもたらすだろう」と発言し、値上げ実施の可能性を示唆しました。消費者の生活にも直結する物価が上昇すれば、内需主導で成長してきたアメリカ経済の勢いが鈍化する懸念があります。

大企業も例外ではありません。米自動車大手のフォード・モーターは2019年5月、世界で7,000人の従業員削減を発表しました。これは、中国市場での販売苦戦に加え、貿易戦争の長期化によって経営環境の不透明感が強まっていることが背景にあります。ジム・ハケットCEOは従業員へのメールで「競争力を維持するために必要」と説明しており、企業が生き残りをかけてコスト削減に走らざるを得ない、厳しい現実を映し出しています。

金融政策の展望と市場の思惑

今回のFRB報告は、景気の基調判断を4月の前回報告の「わずか、または緩やかなペース」から「全体的に緩慢なペース」へと上方修正しました。これは、2019年4月~5月中旬の経済活動が、比較的堅調な内需に支えられて拡大を続けたと判断したためです。一見すると明るいニュースにも思えます。

しかし、市場参加者の間では、この判断を額面通りに受け取る向きは少ないようです。なぜなら、今回の報告書に盛り込まれた情報は2019年5月24日までに集められたものであり、トランプ米政権がメキシコへの関税導入を表明した5月30日以降の企業の声は反映されていないからです。米国野村証券のエコノミスト、雨宮愛知氏は、「足元の景況感は調査時点より悪化している可能性が高い」との見解を示しています。

この影響の広がりをFRB議長のパウエル氏も認識していた可能性があります。彼は2019年6月4日の講演で、「景気拡大維持のために適切に行動する」と発言しており、市場ではこの発言が年内の利下げ観測を強める一因となりました。利下げとは、景気を刺激するために政策金利を引き下げる金融緩和策のことで、FRBの重要な決定の一つです。

現時点では、今回の連銀報告を受けて、2019年6月18日~19日のFOMCで直ちに利下げが決定されると予想する声は少数派です。市場の最大の関心は、7月に公表される次回の地区連銀経済報告に移っています。もし米中協議に進展が見られず、対メキシコ関税も発動されるような事態になれば、景況感の一段の悪化は避けられません。多くの市場関係者は、次回の報告内容を吟味したうえで、2019年7月下旬のFOMCでFRBが利下げに踏み切るという見方を強めています。

編集者としての私の見解では、貿易戦争はもはや単なる貿易摩擦の域を超え、アメリカ経済の根幹を揺るがす重大なリスクへと変貌しつつあります。関税という「武器」の多用は、企業の予測可能性を奪い、経済活動にブレーキをかけます。内需の堅調さだけでは、この外部的な大きな圧力に対抗するのは困難であり、FRBが事態の悪化を未然に防ぐために、近いうちに予防的な金融緩和に動くべき局面にあると言えるでしょう。

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