逆境からの再生:カミナシCEOが語る、現場の課題解決に賭ける新たな挑戦

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クラウド経由でソフトウェアを提供するSaaS企業、カミナシ(東京・千代田)は、現場業務の帳票入力を電子化するソリューションを全国に展開しています。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。創業当初、食品工場に特化した製品開発で市場の選定を誤り、2019年には資金難に直面するなど、会社存続の危機に陥りました。この逆境をどう乗り越えたのか、CEOの諸岡裕人氏が語る再生の物語には、多くの学びが詰まっています。

諸岡氏の起業の原点は、実家で営まれていた空港貨物業務の経験にあります。食品工場での管理業務に従事する中で、作業効率化への必要性を痛感した諸岡氏は、2016年に前身となる「ユリシーズ」を設立。2018年には赤外線を用いた食品温度測定システムを開発し、翌年にはペーパーレス化支援を掲げて社名を「カミナシ」に変更しました。

しかし、食品工場というニッチ市場への特化が裏目に出て、顧客数は20社程度にとどまり、事業は伸び悩みます。事業を続けるべきか苦悩する中で、諸岡氏は「自分に嘘をつくと長続きしない」という教訓を得ます。そして、手元資金が10か月分しか残っていない状況で、事業の方向性を大きく転換する決断を下しました。

食品工場にこだわらず、ものづくりや物流、宿泊業など幅広い業種に対応するソフトウェア「カミナシ」を開発し、2020年にリリース。その過程で、ハードウェア開発を捨て、ソフトウェア事業に集中する戦略を採りました。また、社員数は2024年8月時点で131人と、4年前の9人から大きく増加。かつて優秀な人材採用を恐れていた諸岡氏も、自らのプライドを捨てたことで、優秀な人々が集まる企業文化を築き上げました。

2024年8月27日には、外国人従業員やパートタイマーと管理者が情報をスムーズに共有できる新サービスを発表。これにより、現場で残るアナログ作業を効率化し、デジタル化を推進します。SNS上では、「現場のリアルな課題を知るCEOだからこそ生まれたソリューション」「大企業にも負けない革新性」といった声が寄せられ、注目を集めています。

カミナシの挑戦は、単なる市場シェアの拡大ではなく、現場作業の効率化という課題解決に軸足を置いています。その原点を忘れず、真摯に課題に向き合う姿勢が、これからの成長を支えるカギとなるでしょう。この姿勢こそが、現場作業を支えるソリューション企業としてのカミナシを際立たせるものです。

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