イーロン・マスク氏と国家の対立が激化:X(旧ツイッター)の遮断とSNS規制の行方

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ブラジルで、X(旧ツイッター)が裁判所命令により使用を停止されるという事態が発生しました。この背景には、偽情報削除を巡るイーロン・マスク氏と各国政府の対立があり、SNSを取り巻く規制の議論がますます激化しています。フランスでは通信アプリ「テレグラム」の創業者が逮捕されるなど、SNS運営企業と国家の間で緊張が高まっています。

2024年8月30日、ブラジルの最高裁判所がXの遮断を命じたことで、31日ごろから同国内でXが使用できない状況が続いています。ブラジル政府はこれまでにもSNSの停止命令を出したことがありますが、今回は利用者がVPN(仮想プライベートネットワーク)を使ってアクセスした場合、1日あたり約130万円の罰金を科すという厳しい措置を取りました。さらに、米アップルにもXアプリのストアからの削除を求めるなど、異例の命令を出しています。

Xはブラジル国内で2000万人以上の利用者を抱え、同国のスマートフォン所有者の約3割がアプリを利用していましたが、今回の措置により多くのユーザーが他のサービスに移行しています。短文投稿サービス「ブルースカイ」は、この3日間で100万人の新規ユーザーを獲得したと発表しました。ブラジルでは2022年の大統領選後、SNS上の偽情報が原因で議会襲撃事件が発生した経緯があり、「民主主義への危機」としてSNS規制を強化する動きが進められています。

最高裁判所はXに対し、偽情報対策として特定コンテンツやアカウントの削除を求めましたが、これを検閲と捉えたマスク氏は反発しました。Xはブラジル国内の事業所を閉鎖し、法定代理人の設置や罰金の支払いにも応じなかったため、最終的にサービス停止に至りました。また、ブラジル政府はマスク氏が手がける衛星通信「スターリンク」の金融口座も凍結するなど、規制を強化しています。それでもマスク氏は最高裁判事を揶揄する投稿を続けており、緊張状態は解消されていません。

Xは、2022年のマスク氏による買収以降、偽情報やヘイトスピーチを発信するアカウントの削除を抑制する方針を貫いています。この結果、多くの国で偽情報が拡散し、欧州連合(EU)やオーストラリア、インドなどがXに対する調査や規制を進めています。特にEUは、偽情報対策を義務付けるデジタルサービス法(DSA)に違反しているとしてXを調査し、ブラジルだけでなく多くの国で規制強化の動きが広がっています。

マスク氏は、同様に規制対象となった通信アプリ「テレグラム」の創業者逮捕についても批判し、プラットフォームへの過剰な責任追及に異を唱えています。テレグラム側も「プラットフォームやオーナーに責任を負わせるのは不合理だ」と声明を発表しており、SNS企業と国家の対立は世界的な問題となっています。

欧州ではロシアによるウクライナ侵略やイスラエルとハマスの衝突に関する偽情報が広がる中、国家は「超国家的存在」とも言えるテクノロジー企業に対する圧力を強めています。SNSプラットフォームが持つ影響力と、それを規制しようとする国家の動きは、今後も激しい攻防を繰り広げることになるでしょう。

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