2024年9月現在、武田薬品工業が米国のバイオテクノロジースタートアップ、クムクアット・バイオサイエンシズと新たな抗がん剤の開発に向けたライセンス契約を締結したニュースが注目を集めています。この契約により、武田薬品はクムクアットが開発する抗がん剤について、世界で独占的に開発および商業化を進める権利を取得しました。契約金額は進捗に応じて最大12億ドル(約1700億円)に達する可能性があり、製薬業界やSNS上で大きな反響を呼んでいます。
クムクアット・バイオサイエンシズは2019年に設立された新興企業で、独自の「低分子化合物」を利用した抗がん剤の開発を進めている企業です。この低分子化合物とは、がん細胞に対する免疫応答を活性化させる作用を持つ新しい仕組みを活用した技術で、従来の治療方法とは一線を画します。同社は2021年にも米国の大手製薬企業イーライ・リリーと、最大20億ドル規模の契約を結んでいることで知られています。今回の契約によって、武田薬品はクムクアットが進行中の臨床試験(治験)を引き継ぎ、飲み薬タイプの新規抗がん剤のさらなる開発を推進する計画です。
特許切れによる収益の減少を補うため、武田薬品は近年、新薬開発やバイオ医薬品企業の買収を積極的に進めています。2023年には、中国のバイオ企業であるハッチメッドやアセンテージファーマと、それぞれ大腸がんや白血病の治療薬に関する契約を締結。さらに、2022年12月には米国のニンバス・セラピューティクスの子会社を40億ドルで買収するなど、戦略的な動きが目立っています。
今回のクムクアットとの提携では、対象となる疾患領域や薬剤の具体的な作用メカニズムについては公表されていないものの、がん細胞と免疫反応をターゲットにした先進的なアプローチが期待されています。武田薬品は、単独の治療薬としての利用に加え、既存のがん治療薬との併用療法にも応用できる可能性があるとしています。
製薬業界全体でも特許切れによる「収益の崖」を乗り越えるための競争が激化しています。たとえば、2023年には米ファイザーが米シージェンを430億ドルで、米メルクが米プロメテウス・バイオサイエンシズを108億ドルで買収するなど、大規模な投資が相次ぎました。日本企業ではアステラス製薬が同年、アイベリック・バイオを約59億ドルで買収したことも記憶に新しいところです。
このように、世界の製薬業界がしのぎを削る中、武田薬品の挑戦が新たな成果をもたらすのか、今後の進展に目が離せません。SNSでも「武田のグローバル展開に期待」「新薬開発のスピード感がすごい」といったコメントが寄せられ、話題が広がっています。武田薬品が次世代の医薬品市場でどのような地位を築いていくのか、2024年も注目を集めることでしょう。