現代社会において、情報の真偽を見極める力はかつてないほど重要になっています。2019年08月02日現在、書籍『ファクトフルネス』が40万部を超える異例の大ヒットを記録している背景には、私たちの「情報の受け取り方」に対する危機感があるのでしょう。インターネット上ではAI技術を駆使した「ディープフェイク」と呼ばれる、本物と見分けがつかないほど精巧な偽動画が次々と登場し、事実(ファクト)の境界線が大きく揺らぎ始めています。
こうした混乱の時代だからこそ、著者のハンス・ロスリング氏が提唱する「データに基づいて世界を冷静に判断する姿勢」が、多くの読者の心に響いているのです。SNS上でも「自分がどれほど思い込みで世界を見ていたか痛感した」「数字を見るだけでこれほど希望が持てるとは思わなかった」といった驚きと共感の声が溢れています。感情に流されず、客観的な数値で現状を把握することの大切さが、今改めて見直されているといえるでしょう。
過去の失敗から導き出された「データ重視」の真髄
ロスリング氏がこれほどまでにデータ重視を説く背景には、彼自身が過去に経験した手痛い失敗があります。専門家であっても、教育レベルや所得、公衆衛生といった世界の基本情報を正しく答えられず、チンパンジーの正解率を下回ってしまうという事実は衝撃的です。これは私たちが、ドラマチックすぎるニュースや古い記憶に依存して、無意識のうちに「世界はどんどん悪くなっている」というネガティブなバイアス(思考の偏り)に陥っているからに他なりません。
ここで言うディープフェイクとは、深層学習(ディープラーニング)を用いて人物の顔や声を合成する技術のことですが、こうした最新の偽情報に惑わされない唯一の手段は、普遍的な統計データに立ち返ることです。個人的な意見を述べさせていただけるなら、私たちは溢れる情報に一喜一憂する前に、まず一歩立ち止まって「その根拠は何か」を確認する習慣を持つべきです。事実を正しく知ることは、未来への不安を解消するための確かな処方箋となるはずですから。