ANA、世界初の“サメ肌フィルム”で航空業界の脱炭素に挑む

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2024年9月2日、全日本空輸(ANA)が、機体表面に「サメ肌」を模した特殊フィルムを装着した貨物専用機(フレイター)を成田空港から飛び立たせました。この特殊フィルム「エアロシャーク」は、ドイツのルフトハンザテクニック社と化学大手BASFが共同開発したもので、機体表面の摩擦抵抗を低減することで燃費を改善する革新的な技術です。ANAはこの技術の導入により、1機あたり年間約250トンの燃料消費と800トンのCO2排出を削減できると見込んでいます。

エアロシャークの表面には「リブレット」と呼ばれる微細な凹凸が施されており、この凹凸が空気の流れを整え、飛行中に発生する摩擦抵抗を効果的に減少させます。この仕組みは、サメの肌が水中での摩擦を軽減する特性をヒントに開発されました。フィルムの溝の深さは髪の毛と同程度の50マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)で、ボーイング777型フレイターでは約2000枚のフィルムが使用されています。これにより、燃費改善効果は1%程度ですが、航空業界にとっては非常に重要な一歩となるとANAの関係者は強調します。

このフィルムの導入は、持続可能な航空燃料(SAF)が普及するまでの間、即効性のある脱炭素対策として位置づけられています。SAFは使用済み食用油などを原料とする次世代燃料で、CO2排出量を約8割削減できるとされていますが、供給量が非常に限られており、航空産業全体での本格的な利用には時間がかかるのが現状です。国際航空運送協会(IATA)によれば、2024年のSAF生産量は約19億リットルと前年比3倍の増加が見込まれていますが、航空業界全体の燃料需要のわずか0.5%にすぎません。

ANAは2025年春までにこの技術を旅客機にも導入する予定であり、22年度にはニコン製の特殊フィルムを用いた試験も実施するなど、様々な技術を並行して研究開発しています。現在、ANAホールディングスが排出するCO2量は年間1051万トンに達しており、そのほぼ全量が航空機の運航によるものです。同社は2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、この特殊フィルムの導入はその一環となります。

SNSでは「ANAの挑戦に期待」「サメ肌フィルムで空の環境問題に挑む姿勢が素晴らしい」といった声が多数寄せられています。また、「持続可能な航空技術の進展が待ち遠しい」といった期待も高まっています。欧州を中心に環境配慮を重視して航空利用を避ける「飛び恥」の意識が広がる中、航空業界は一歩一歩の努力を積み重ねながら持続可能な未来に向けて進んでいます。ANAの取り組みがこの分野にどのような影響を与えるのか、今後も注目されるでしょう。

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