化学メーカー大手のクレハが、2019年08月01日に大きな経営判断を下しました。マヨネーズやケチャップの容器としてお馴染みの「ブローボトル事業」を、11月01日付で共同印刷へと譲渡することを発表したのです。譲渡額は17億円にのぼり、この決定は業界内に大きな驚きを与えています。SNSでは「あの使いやすい容器も変わってしまうの?」といった、生活に身近な製品ゆえの関心の高さが伺えます。
今回注目すべきは、会社法に定められた「簡易吸収分割」という手法が用いられる点でしょう。これは、譲渡側にとって資産規模が比較的小さい場合に、株主総会の決議を省略してスピーディーに手続きを進められる制度を指します。クレハは、自社が強みを持つ炭素繊維や機能性化学品といった高付加価値な領域へ、経営資源を大胆にシフトさせる狙いがあるようです。選択と集中を加速させる、非常に現代的な経営戦略と言えるのではないでしょうか。
そもそもブローボトルとは、加熱した樹脂に空気を吹き込んで膨らませる「吹込成形」で作られるプラスチック容器のことです。クレハはこれまで一部の製造工程を担ってきましたが、キャップなどの部品を外部調達に頼っていたため、一体感のある製品改良が難しいという課題を抱えていました。消費者ニーズが多様化する中で、スピード感のある開発が困難になったことが、今回の譲渡を後押しした大きな要因のひとつと考えられます。
一方で、受け入れ先となる共同印刷は、2020年度までに生活・産業資材系の事業規模を300億円まで拡大させるという野心的な目標を掲げています。2017年度と比較して3割増という高いハードルですが、今回の事業承継はこの成長を支える強力なエンジンとなるでしょう。SNS上でも「共同印刷の総合力が加われば、より高機能な容器が登場するのでは」と、未来のパッケージ進化に対する期待の声が数多く寄せられています。
編集者の視点から見れば、今回のディールは双方にとってメリットの大きい「攻め」の決断だと確信しています。クレハは得意分野での世界シェア拡大に専念でき、共同印刷は念願の製品ラインナップ拡充を手に入れるからです。企業が自らの弱みを潔く認め、強みを持つ他社へタスキをつなぐ姿は、変化の激しい現代において生き残るための正解の一つかもしれません。今後のパッケージ市場がどのように塗り替えられるのか、目が離せません。