電力・ガス業界で加速するM&A—脱炭素時代を見据えた再生可能エネルギー投資の課題と展望

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2024年1~6月の電力やガス業界におけるM&A(合併・買収)の件数が49件に達し、同期間で過去最多を記録しました。この背景には、東京ガスをはじめとする大手企業が再生可能エネルギー分野の成長を狙い、関連企業の株式取得を進めていることがあります。低炭素社会への移行が急務となる中、業界全体で再エネ事業へのシフトが進む一方、収益化の道筋が次なる課題となっています。

M&Aに関するデータを提供するレコフデータ(東京・千代田)によれば、2024年上半期における電力会社やガス会社が関与したM&A件数は、前年同期比で26%増加しました。特に目立つのが、再生可能エネルギー関連企業の株式取得です。温室効果ガスを排出しないエネルギー源への需要が高まる中、企業は太陽光発電や風力発電などを手掛ける企業との提携を強化しています。

例えば、東京ガスは2024年4月、再エネ事業を手掛けるレノバと資本業務提携を結びました。第三者割当増資を通じて約178億円を投資し、議決権の約13%を取得して第2位の株主となりました。東京ガスは、2040年までに国内の電力販売量の50%を再生可能エネルギーや非化石証書による電力にする計画を掲げています。この提携を通じて、レノバが進める陸上風力発電プロジェクトにも参画する見通しです。

また、国内企業による海外企業の買収も増加傾向にあります。2024年上半期の海外M&A件数は前年同期比で60%増の16件となり、全体の約3割を占めました。日本はエネルギー資源を海外に依存しているため、再エネ分野で先行する欧州などの技術や経営権を取り込む動きが活発化しています。例えば、国内発電大手のJERAは2024年2月、オーストラリアのエネルギー大手ウッドサイド・エナジー・グループからガス田権益の約15%を14億ドル(約2050億円)で取得しました。このガス田は二酸化炭素含有率が非常に低いため、環境負荷の少ないガス供給が可能です。

一方で、再生可能エネルギー関連事業への市場の期待はやや冷え込んでいます。例えば、レノバの株価は2023年末比で13%下落し、ウエストホールディングスも14%下落するなど、日経平均株価の16%上昇と対照的な動きを見せています。この背景には、固定価格買い取り制度(FIT)の終了後に採算が合わない事業が増える懸念や、金利上昇による投資環境の厳しさが影響しています。

エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表は、「CO2排出実質ゼロの目標に向け、再生可能エネルギーの需要は引き続き高まる」としながらも、「運用効率化やコスト削減といった具体的な対応が不可欠」と指摘しています。M&Aによる企業買収だけでなく、効率的な運用体制の構築が、今後の成功の鍵を握るでしょう。

SNSでは「再生可能エネルギーへの投資は未来への一歩」「収益化の壁を乗り越える工夫に期待」といった意見が多く見られます。脱炭素時代の到来に向け、電力・ガス業界の挑戦がどのように進化するのか、注目が集まっています。

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