2019年08月02日現在、日本郵政グループが揺れています。かんぽ生命保険において、顧客に不利益を及ぼした疑いのある契約が18万件を突破するという、前代未聞の事態が明らかになりました。かつて「安心・安全」の代名詞だった郵便局で、一体何が起きているのでしょうか。現場から聞こえてくるのは、あまりにも過酷で歪んだ営業の実態です。
日本郵便の各支社では、古い契約を解約させて新しい契約に切り替えさせる「乗り換え」を暗に推奨する動きがありました。これにより顧客は保険料が上がったり、無保険の期間が生じたりするリスクを負わされています。現場を支配していたのは「数字を上げた者こそが正義」という極端な成果主義でした。実績さえ出せば、そのプロセスが不適切であっても不問に付される空気が醸成されていたのです。
ここで言う「ガバナンス」とは、企業が自らを律し、不正が起きないように監視する統治体制を指します。しかし、現在の郵政グループでは、この機能が完全に麻痺していると言わざるを得ません。民営化されたとはいえ、国が株主として深く関与し、新規事業への参入が厳しく制限される中で、現場には極めて重いノルマが課せられました。出口のない重圧が、不正を誘発する温床となったのでしょう。
SNSでの告発が暴いた組織の腐敗と複雑な権力構造
今回の問題がこれほどまでに拡大した背景には、インターネットの影響も無視できません。近年、職員の待遇悪化に対する不満が蓄積しており、Twitter(現X)などのSNSを通じて内部の惨状を訴える声が急増しています。かつては組織内に封じ込められていた「負の連鎖」が、デジタル社会の透明性によって白日の下にさらされた形です。ネット上では「信じていたのに裏切られた」という消費者の悲痛な叫びが溢れています。
さらに事態を複雑にしているのが、組織内の歪な力関係です。親会社の日本郵政のもと、日本郵便とかんぽ生命が分断されているため、情報の風通しが極めて悪くなっています。また、「特定局長」を中心とした全国郵便局長会という巨大な政治団体が強い影響力を持っており、これが経営の近代化や浄化作用を妨げている側面も否認できません。古い慣習と政治的なしがらみが、組織の刷新を拒んでいるように見受けられます。
私自身の見解を述べさせていただくなら、今回の不祥事は単なる個人の逸脱ではなく、構造的な「制度疲労」の産物です。数字を追い求めるあまり、顧客の信頼という最も大切な財産を切り捨てた代償はあまりに大きいでしょう。郵政グループが真に再生するためには、ノルマ偏重の文化を根底から解体し、真に国民の生活に寄り添う組織へと生まれ変わる抜本的な改革が必要です。今こそ、企業の存在意義が厳しく問われています。