世界の安全保障を長年支えてきた大きな柱が、ついに崩れ去る時を迎えました。1987年に米国と当時のソ連が交わした「中距離核戦力(INF)全廃条約」が、2019年08月02日をもって正式に失効します。この条約は、射程が500キロメートルから5500キロメートルの地上発射型ミサイルをすべて廃棄するという画期的な軍縮合意でした。しかし、米露双方が互いの条約違反を厳しく非難し合い、歩み寄りの兆しが見えないまま、歴史的な枠組みはその役割を終えることになったのです。
今回の失効を受けて、SNS上では「冷戦時代に逆戻りするのではないか」「核の脅威が身近に迫っている」といった不安の声が数多く噴出しています。特に若い世代からは、かつての核軍縮の歩みが止まってしまうことへの失望感や、先行きの見えない軍拡競争への恐怖を訴える投稿が目立っているようです。専門用語としての「INF」とは、比較的短い時間で目標に到達し、迎撃が困難なミサイルを指します。こうした兵器の制限がなくなることは、私たちの日常に直結する平和の均衡が崩れることを意味しているのでしょう。
トランプ政権は条約の失効を見据え、すでに新型ミサイルの開発に着手する意向を示しており、対するロシアも対抗措置を辞さない構えを崩していません。条約という「重し」が外れたことで、両国は自国の防衛力を強化するために、これまで禁止されていた兵器の配備を加速させるものと予測されます。現在、米露間で残された核軍縮の枠組みは、2021年に期限を迎える「新戦略兵器削減条約(新START)」のみとなりました。国際社会の安定を維持するための最後の砦とも言えるこの条約の行方に、世界中の視線が注がれています。
米国は今後の軍縮構想に、急速に軍事力を拡大させている中国を巻き込みたい考えですが、当の中国側は参加を断固として拒否し続けています。中国にとって自国の軍事戦略の要であるミサイル戦力を制限されることは、安全保障上の大きな痛手となるからに他なりません。編集者としての私の視点では、大国間のメンツや利害が複雑に絡み合い、対話よりも力の誇示が優先されている現状には強い危機感を覚えます。軍縮の重要性を再認識し、多国間での実効性ある新しいルール作りが今こそ求められているのではないでしょうか。