2019年08月01日、タイのバンコクにて米中の外交トップが顔を合わせる注目の外相会談が開催されました。中国の王毅外相とアメリカのポンペオ国務長官によるこの対談では、現在進行形で揺れ動くアジア情勢を象徴するような、非常に重みのある発言が飛び交っています。SNS上でも「香港問題がこれほどまでに深刻化しているのか」と驚きの声が広がっており、国際社会の視線が一気に東南アジアの地へと注がれる形となりました。
今回の会談で最も注目すべきは、中国側が香港情勢に対して「核心的利益」という極めて強い言葉を用いた点でしょう。この「核心的利益」とは、中国共産党にとって国家の主権や安全、そして体制の維持に関わる、一切の妥協が許されない最優先事項を指す専門用語です。これまで南シナ海やウイグル問題に対して使われてきたこの表現が、香港に対して適用されたことは極めて異例の事態であり、習近平指導部が抱く危機感の強さが如実に表れています。
現在、香港では大規模なデモが続いており、これに対して中国国防省などは「香港基本法」に基づいた人民解放軍の投入の可能性を示唆しています。この基本法とは、香港の高度な自治を認めた「一国二制度」の根幹を成す憲法のような法律ですが、治安維持のために軍の出動を要請できる規定も含まれています。中国側は、こうした混乱の背後にアメリカの影を感じ取っており、「米国の作品だ」とまで断じるなど、不快感を隠そうとはしていません。
中国外務省の華春瑩報道局長は、2019年07月30日の記者会見において、アメリカが香港の民主派勢力と接触していることを強く非難しました。「火中の栗を拾う危ない遊びはやめるべきだ」という比喩を使い、内政干渉を即座に停止するよう迫っています。編集者の視点から見れば、中国は香港の混乱を単なる地方都市の問題ではなく、体制を揺るがす国際的な政争の具として捉えており、対米感情がかつてないほど尖鋭化していることが分かります。
北朝鮮の非核化を巡る駆け引きと米中の温度差
一方で、今回の会談では停滞が続く米朝関係についても議論が交わされました。ポンペオ国務長官は、北朝鮮との非核化に向けた実務者協議について「いつでも再開する準備がある」と述べ、対話の窓口を常に開いている姿勢を改めて強調しています。これはトランプ政権が朝鮮半島の非核化を外交上の大きな成果としたい意向の表れですが、実務レベルでの具体的な進展が見えない中での、北朝鮮に対するラブコールとも受け取れるでしょう。
このアメリカの姿勢に対し、中国の王毅外相は協議の再開を支持しつつも、具体的な手法については独自の主張を展開しました。王毅氏は、北朝鮮が段階的に非核化を進めるのに合わせ、国際社会も経済制裁の解除といった「見返り」を逐次提供していくべきだという考えを示しています。これは一気に全ての核を放棄させる「一括妥結」を求める動きを牽制し、北朝鮮の立場に寄り添うことで、地域での影響力を維持したい中国の戦略が見え隠れします。
私自身の見解としては、香港問題という「内政」への強いこだわりと、北朝鮮という「外政」での協力姿勢を使い分ける中国の外交術は極めて老獪だと感じます。アメリカが人権や民主主義を旗印に香港へ関与を深めれば深めるほど、米中関係はより複雑な迷路へと迷い込んでいくでしょう。2019年08月02日現在、アジアの安定を左右するこの二大国のパワーゲームは、まさに一触即発の緊張感の中にあり、今後も一分一秒たりとも目が離せません。