ビジネスの現場で欠かせない「営業車」の在り方が、今まさに大きな転換点を迎えています。これまで企業が車を利用する際は、自社で購入するか、あるいは長期間借り続ける「カーリース」が一般的でした。しかし、2019年08月02日現在、その勢力図を塗り替えようとしているのが、短時間から気軽に利用できる「カーシェアリング」の存在です。
この変化を牽引しているのが、業界最大手のパーク24です。同社が運営する「タイムズカーシェア」を導入した企業からは、驚きの声が上がっています。例えば、みずほ証券では2年前からこのサービスを営業活動に取り入れました。その結果、かつて1100台抱えていたリース車を大幅に削減し、月々のコストを約500万円もカットすることに成功したのです。ビジネスの効率化が叫ばれる今、この数字は無視できないインパクトを持っています。
ここで改めて「カーリース」と「カーシェア」の違いを整理しておきましょう。カーリースとは、特定の車両を年単位で契約し、自社の車と同じように占有する仕組みです。これに対し、カーシェアは複数の会員で車両を共同利用します。最大の特徴は、駐車場代やガソリン代、保険料といった維持費が一切かからず、10分から15分といった極めて短い単位で「使った分だけ」料金を支払えば済む点にあります。
平日の「空き」を宝の山へ!パーク24が仕掛けた逆転の発想
パーク24が法人顧客の開拓に注力した背景には、ある切実な課題がありました。もともと個人利用が中心だったカーシェアは、休日には予約が埋まるものの、平日の稼働率が低いという弱点を抱えていたのです。そこで同社は2016年11月に「法人営業グループ」を新設しました。平日に車を必要とするビジネスマンをターゲットにすることで、眠っていた車両を有効活用しようと考えたわけです。
この戦略は見事に的中しました。企業のオフィス近くに専用のステーションを設置したり、出張者が駅を降りてすぐに使えるよう主要駅周辺の配備を強化したりと、かゆい所に手が届くサービスを展開したのです。SNS上でも「出張先でレンタカーの手続きをする手間が省けて助かる」「必要な時だけサッと乗れるのがスマート」といった、現場のビジネスマンからのポジティブな反応が目立っています。
その結果、パーク24の法人会員数は過去3年で約48万人にまで急増しました。車両1台あたりの営業利益も、2018年11月から2019年04月期には2年前の2倍に相当する月平均2万1400円に達しています。企業のコスト削減ニーズと、運営側の稼働率向上という利害が一致したことで、モビリティ事業は今、かつてないほどの成長期を迎えていると言えるでしょう。
全国展開を急ぐオリックスと三井不動産!激化するシェア争い
王者の快進撃に対し、競合他社も黙ってはいません。リース業界で圧倒的な強さを誇るオリックス自動車は、これまで培った車両調達のノウハウを武器に、カーシェア車両の増強に乗り出しました。2019年度中には、主要都市中心だったサービスを全国規模へと拡大する計画を立てています。リースとカーシェア、両方の選択肢を提示できる強みを活かし、企業の細かな要望に応える構えです。
また、都心部の一等地に駐車場を多数保有する三井不動産リアルティの「カレコ」や、実証実験を開始したトヨタ自動車など、プレイヤーは多岐にわたります。さらに、この波は民間企業にとどまりません。東京都狛江市のように、公用車をカーシェアに切り替え、職員が使わない時間は市民に開放するという、官民一体となったユニークな取り組みも始まっており、車の「所有」から「利用」へのシフトは社会全体へと広がっています。
現在、国内のリース車は約373万台にのぼりますが、カーシェア車両はまだその1%程度に過ぎません。しかし、資産を所有せずに経費をコントロールする「持たない経営」が主流となる中で、この差が縮まるのは時間の問題でしょう。利便性と経済性を兼ね備えたカーシェアが、日本のビジネスシーンにおける「移動のスタンダード」を定義し直す日は、すぐそこまで来ているのかもしれません。
編集者からの一言:移動の「自由度」が企業の競争力を決める
今回の取材を通じて感じたのは、カーシェアの本質的な価値は単なるコスト削減だけではないということです。必要な時に、必要な場所で、最適な手段を選べる「柔軟性」こそが、スピード感が求められる現代ビジネスにおいて最大の武器になります。固定費という重荷を下ろした企業が、その余力をどこに投資していくのか。モビリティ革命の先にある、企業の進化から目が離せません。