江別 蔦屋書店が示す「令和のイオン」という新機軸!スローライフと地域密着が変えるリアル店舗の未来

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2018年11月21日、北海道江別市にこれまでの常識を覆す「江別 蔦屋書店」が誕生しました。2019年08月02日現在、オープンから半年以上が経過してもなお、平日の昼間から多くの人々で賑わいを見せています。かつては隣接する札幌市の影に隠れ、地元住民からも「何もない場所」と評されていたこの土地が、今や全国の小売業界から熱い視線を浴びる注目のスポットへと変貌を遂げたのです。

なぜあえて江別だったのでしょうか。その背景には、札幌市内の地価高騰という現実的な要因が潜んでいます。近年の札幌では、80平方メートル程度のマンションが4000万円を超えるなど首都圏並みの水準まで上昇しており、その結果として、豊かな自然が残る江別がベッドタウンとして再評価されているのです。CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)は、この地に「田園都市でのスローライフ」という新たな価値を見出しました。

SNS上では、「本屋という枠を超えていて、一日中過ごせる」「洗練されているのに、どこかホッとするコミュニティの場」といった称賛の声が相次いでいます。昭和の駅前開発、平成の郊外型大型ショッピングセンターを経て、令和という新しい時代に求められる商業施設のあり方が、ここ江別の地で具現化されていると言えるでしょう。まさに、モノを売る場所から「体験」を共有する場所へのシフトが加速しています。

「コト」重視の構成が実現する脱・本屋の衝撃

江別 蔦屋書店は、もはや単なる書店ではありません。約4万4500平方メートルという広大な敷地に「食」「知」「暮らし」の3棟が並び、その姿は令和版の「ミニ・ショッピングセンター(SC)」と呼ぶにふさわしいものです。特筆すべきは、食のゾーンの充実ぶりでしょう。そこには全国チェーンの店ではなく、北海道や地元の知る人ぞ知る名店が集結しており、ここでしか味わえない個性が際立っています。

「知」の棟では1500平方メートルの空間に書籍が並びますが、「暮らし」の棟ではアウトドア用品や家具のセレクトショップ、さらには子供たちが実物の電車を眺めながら遊べるフロアまで備わっています。ここで言う「コト」重視とは、単に商品を購入するだけでなく、その空間に滞在すること自体に価値を感じるライフスタイル提案型のビジネスモデルを指しており、Amazonなどのネット通販とは対極の魅力を提供しています。

地域密着の姿勢は、イベントの多さにも表れています。著名なタレントを呼ぶのではなく、地元の住民が講師を務める料理教室や手芸ワークショップなど、月に100回を超える催しが開かれているのです。これこそが、他地域から人を呼び込み、地域経済を循環させる「外貨獲得」の源泉となります。どこにでもあるブランドを集めた従来のSCでは、もはや消費者の心を動かすことはできないという、小売業への警鐘とも受け取れます。

制約をチャンスに変える地方創生の新たな希望

私は、この江別の事例こそが、今後の地方都市が生き残るためのバイブルになると確信しています。何もないという制約条件を「他にないものを作るキャンバス」として捉える逆転の発想は、人口減少社会における唯一の希望ではないでしょうか。バルニバービの佐藤裕久社長が説く「そこにしかないものを作る」という信念は、まさに町を再生させるための核心を突いた言葉であり、蔦屋書店はその理想を形にしています。

今の時代、買い物だけならスマートフォン一つで完結します。しかし、誰かと語らい、知的な刺激を受け、心豊かな時間を過ごすという体験は、デジタルの世界だけでは完結し得ません。CCCが推進する「アマゾンとは逆のベクトル」を向いた空間創造は、リアル店舗が提供すべき真の価値を再定義したと言えます。2019年08月02日、私たちは今、商業施設の歴史が大きく塗り替えられる瞬間に立ち会っているのです。

江別 蔦屋書店が灯したこの明かりは、今後全国の地域型店舗へと広がっていくことでしょう。画一的なサービスから脱却し、その土地の風土や人々の息遣いを反映させた店作りが、これからのスタンダードになるはずです。地方にはまだ見ぬ可能性が眠っていることを、この「令和のイオン」が証明してくれました。今後、あなたの街の蔦屋書店がどのように進化していくのか、その動向から目が離せません。

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