クアルコムを襲う「ファーウェイ・ショック」の正体とは?米中摩擦が招く半導体内製化の脅威

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2019年07月31日、世界のモバイル通信を牽引してきた米半導体大手クアルコムが、衝撃的な業績見通しを発表しました。同年07月から09月期の売上高が、前年の同じ時期と比べて最大で26%も落ち込むというのです。このニュースはSNSでも「スマホ市場の勢力図が激変している」「クアルコム一強時代の終焉か」と大きな波紋を広げています。かつて市場を謳歌した巨人に、一体何が起きているのでしょうか。

苦戦の背景には、泥沼化する米中貿易摩擦が生んだ皮肉な連鎖反応があります。米国政府による輸出規制を受けた中国のファーウェイ(華為技術)は、海外での苦境を跳ね返すべく、中国国内市場への攻勢を劇的に強めました。その結果、クアルコムの主要顧客であるシャオミ(小米)やオッポ(OPPO)といった中国メーカーのシェアが奪われてしまったのです。顧客の苦境は、そのまま供給元であるクアルコムの業績へと直撃しています。

「内製化」という名の静かなる革命がもたらすリスク

クアルコムにとって真の脅威は、単なる販売台数の減少だけではありません。スティーブ・モレンコフCEOが最も警戒しているのは、スマホメーカー各社が進める「半導体の内製化」です。これは、従来クアルコムなどの専門メーカーから購入していたチップを、自社で設計・製造することを指します。自社製品に最適化したチップを自前で用意できれば、コスト削減だけでなく、他社との差別化も容易になるため、大手各社はこの戦略を加速させています。

実際にファーウェイは、傘下のハイシリコンを通じて高性能なチップを自社開発しており、米IDCの調査によれば、2019年04月から06月期に中国で過去最高の出荷台数を記録しました。かつては2014年に66%という圧倒的なシェアを誇ったクアルコムのモデムチップ(スマホの通信を司る心臓部)ですが、2018年には49%にまで低下しています。サムスン電子やファーウェイが10年という歳月をかけて磨き上げた技術が、今や王者の座を脅かしているのです。

さらに、かつての盟友であるアップルも動き出しました。同社は米インテルのモデムチップ事業を10億ドルで買収すると発表し、主要技術を自社でコントロールする姿勢を鮮明にしています。専門家の間では、数年以内には5G向けのチップも自社開発に切り替わるとの予測も出ています。成熟期を迎えたスマホ産業において、利益を外部に漏らさず自社で囲い込む動きは、もはや止めることのできない必然的な流れと言えるでしょう。

私自身の見解を述べさせていただくなら、クアルコムの置かれた状況は「技術の民主化」が招いた必然の試練だと感じます。通信規格という巨大な参入障壁に守られてきた同社ですが、ライバルたちが執念でその壁を乗り越え始めた今、知財料に依存するビジネスモデルは限界を迎えつつあります。5Gの先頭を走る同社が、この「内製化」という巨大な波をどう乗りこなすのか。それは、一企業の存亡を超えて、世界のハイテク勢力図を占う試金石となるはずです。

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