日本の家電業界を牽引するシャープが、東南アジアの要所であるベトナムに新たな生産拠点を構築することを2019年08月01日に発表しました。この決断の背景には、長期化の様相を呈しているアメリカと中国による激しい貿易摩擦が存在しています。トランプ政権が発動を検討している対中追加関税、いわゆる「第4弾」の影響を最小限に抑えるため、同社はリスク分散を急いでいる状況です。世界情勢が目まぐるしく変化する中で、製造拠点を最適化するスピード感が今まさに求められています。
今回、新たに建設される工場は、ベトナム最大の都市であるホーチミンの近郊に位置しています。2020年02月には資本金27億円を投じて運営を担う子会社を設立し、同年度中の稼働開始を目指す計画が明かされました。SNS上では「シャープの決断は早い」「いよいよ脱中国が加速するのか」といった驚きの声が広がっており、投資家やガジェットファンの間でも大きな注目を集めています。サプライチェーンの再編は、単なるコスト削減を超えた企業の生存戦略と言えるでしょう。
米中摩擦の荒波を越える!車載ディスプレーとダイナブックの新たな旅立ち
新工場の主要な役割は、これまで中国で生産する予定だった米国向けの「車載用液晶ディスプレー」の製造を担うことです。これは自動車のインパネなどに搭載される画面のことで、高度な技術力が要求される分野に他なりません。さらに、子会社のダイナブックが手掛けるノートパソコンについても、米国向け製品を中心に中国からベトナムへ生産を移管する検討が始まりました。特定の国に依存しすぎない「チャイナ・プラスワン」の動きが、現実味を帯びて加速しています。
野村勝明副社長は記者会見の席で、関税リスクの不透明さが今回の決定を後押ししたと率直に語りました。関税とは、輸入される物品に対して課される税金のことで、これが引き上げられると製品価格が上昇し、市場での競争力を失う恐れがあります。企業にとっては、いつ発動されるか予測できない関税はまさに経営の脅威です。こうした地政学的なリスクに対して、先手を打って物理的な拠点を移動させる戦略は、グローバル企業としての底力を感じさせます。
一方で、シャープが2019年08月01日に発表した2019年04月から06月期の決算は、売上高が前年比4%減、純利益が35%減という厳しい数字となりました。これは鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って以来、初めての減収減益となります。主力供給先であるアップルのiPhone販売が世界的に鈍化したことや、中国市場でのテレビ販売の苦戦が重くのしかかりました。しかし、次期以降はスマートフォンの需要回復や白物家電の好調が見込まれており、通期予想は据え置かれています。
個人的な見解としては、シャープの今回の決断は非常に賢明であり、かつ日本の製造業の未来を象徴する一手だと感じます。これまでは安価な労働力を求めて中国へ集中してきましたが、政治的なリスクがこれほど顕在化した今、ベトナムへのシフトは必然です。ダイナブックのような象徴的なブランドが動くことで、他メーカーも追随する可能性は高いでしょう。技術を守りつつ、したたかに世界市場を泳ぎ抜くシャープの「次なる一手」に、今後も目が離せません。