日本を代表する企業経営者たちの懐事情に、大きな変化の波が押し寄せています。2019年08月02日に発表された調査結果によると、2018年度における主要企業の最高経営責任者(CEO)が受け取った報酬の中央値は、前年度比3.3%増の1億6000万円に達しました。これは2年連続で過去最高を更新する数字であり、日本国内でも経営者の「稼ぐ力」が正当に評価される時代が到来したと言えるでしょう。
今回の報酬アップを牽引しているのは、単なる固定給の引き上げではありません。注目すべきは、企業の利益や株価に連動して支払額が決まる「業績連動報酬」の割合が急拡大している点です。特に、中長期的な企業価値の向上を促す「株式報酬」などの導入が進んだことで、経営者と株主が同じ目線で利益を追求する仕組みが一段と強固になりました。まさに「成果を出した分だけ報われる」という欧米型のスタイルが定着しつつあります。
具体的な事例に目を向けると、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長CEOの例が際立っています。同氏の2018年度の報酬総額は、前年度から約4割も増加して17億5800万円に達しました。その内訳を見ると、賞与部分が前年比で9割も増えており、経営指標の達成がいかに個人の実入りに直結するかが鮮明に示されています。こうした高額報酬はSNS上でも「日本企業もようやく実力主義になった」と歓迎する声がある一方、「従業員との格差が広がりすぎるのではないか」といった懸念も入り混じっています。
広がる世界との「年収格差」と日本型経営の転換点
国内で過去最高を記録したとはいえ、世界的な視点で見るとまだ大きな隔たりが存在します。今回の調査によれば、米国のCEO報酬の中央値は14億8000万円に上り、日本との差は約9倍にまで広がりました。欧州に目を向けても、ドイツの経営者は7億4000万円を受け取っており、日本の水準を大きく上回っています。グローバルな人材獲得競争が激化する中で、日本の報酬水準をどこまで引き上げるべきかは、今後の大きな論点となるはずです。
ここで専門用語を整理しておくと、今回重視されている「業績連動報酬」とは、売上高や営業利益といった具体的な経営目標の達成度合いに応じて金額が変動する仕組みを指します。以前の日本企業では、良くも悪くも横並びで安定した報酬体系が主流でしたが、現在は「攻めの経営」を促すために、この変動部分の比率を高める改革が進んでいるのです。2018年度には、報酬に占める成果連動部分の割合が58%にまで上昇し、前年から6ポイントも跳ね上がりました。
編集者としての視点から述べれば、この報酬改革は日本経済の活性化に不可欠なステップだと確信しています。優秀なリーダーに高いインセンティブを与えることは、企業の持続的な成長を促し、結果として株主や社会全体に利益をもたらすからです。ただし、短期的な数字を追うあまり、強引なコストカットや不正に走るリスクも孕んでいます。透明性の高い情報開示と、納得感のある評価基準の構築が、これからの日本企業には強く求められるでしょう。