三越伊勢丹、13年ぶりの最高益が射程圏内—改革と効率化が導く株主還元強化

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2024年9月、三越伊勢丹ホールディングスが進める経営改革が、同社の収益力を大きく押し上げています。2025年3月期の純利益予想は前期比4%増の580億円と、2012年3月期の最高益(588億円)に迫る見通しです。インバウンド需要に加え、社員や店舗の効率的な運営を重視した経営改革が功を奏し、業績の安定性と成長性を両立しています。秋には、さらなる改革案の第2弾が発表される予定で、株主還元の拡大と自己資本利益率(ROE)の二桁達成が市場から期待されています。

同社の改革が顕著に表れたのが、2024年4〜6月期の決算です。売上高は前年同期比9%増加した一方で、販売管理費は1%減少しました。この効率改善により、収益構造の強化が鮮明となっています。また、前期末時点で従業員数は2020年3月末比で24%減少しているにもかかわらず、営業利益は3.5倍に増加しました。さらに、店舗数も新型コロナウイルス禍前(2019年12月)と比較して約2割削減されています。

労働生産性の向上も注目に値します。従業員1人当たりの付加価値額は2018年度比で53%増加し、競合他社である高島屋(38%増)やJ・フロントリテイリング(32%増)を大きく上回りました。「従業員1人当たり売上高」の改善が特に顕著で、新たな収益認識基準を適用した2022年3月期比で4割も増加しています。

こうした成果の背景には、細谷敏幸社長のリーダーシップがあります。2021年の就任後、細谷氏は「館業から個客業へ」を掲げ、外商の強化やクレジットカード会員・オンラインストア会員の拡大を推進しました。その結果、2021年3月期時点で約700万人だった会員数は2.4倍に増加し、購買意欲の高い顧客層への直接アプローチが可能となっています。また、「百貨店の科学」と称される300ページの運営指針を作成し、従来の売上偏重型の経営から脱却を図りました。

さらに、全国で課長職以上の社員との座談会を200回以上実施し、計3500人に改革の必要性を直接説明することで、現場の意識改革を促しました。その結果、採算が取れない催事を見直す店舗が増加するなど、改革が浸透し始めています。

株主還元も大きく改善しています。前期の総還元性向は50.1%とコロナ禍前の35%から大幅に上昇し、ROEも9.8%と高島屋(7.3%)やJ・フロント(8.1%)を上回る水準に達しました。株式市場の評価も高く、2024年8月末の株価上昇率は2019年末比で2.2倍となり、小売業界の中でトップを記録しました。

2026年3月期から始まる6カ年の次期中期経営計画では、具体的な数値目標や株主還元策が発表される予定です。大和証券のアナリストは、「6年間で総還元性向70%も期待でき、ROEは安定的に10%以上を目指せる」との見解を示しています。細谷社長も「来期以降は利益をさらに株主へ還元していく」と述べており、投資家の期待はますます高まっています。

市場では「効率化の成果が顕著」「株主還元が大幅に強化される予感」といった声が多く寄せられています。三越伊勢丹が取り組む改革の次のステージが、どのように企業価値をさらに押し上げるのか注目されます。

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