漁港が変わる!魚の魅力と漁業体験で広がる新しい海の楽しみ方

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漁港といえば、これまで漁師が魚を水揚げし、卸売会社が取引する場というイメージが強いものでした。しかし、2024年9月現在、この漁港が一般の消費者にも開放され、魚の魅力を直接発信する動きが全国で広がっています。この新しい取り組みは、魚離れが進む中で消費者に漁業や産地への理解を深めてもらうだけでなく、水産物の需要喚起にも貢献しているのです。

茨城県大洗町にある漁協直営食堂「かあちゃんの店」では、週末の8月下旬、開店前から50人近い行列ができていました。シラス丼やハマグリの酒蒸しなど、地元の海で水揚げされた新鮮な魚介類が人気で、これらを漁師の妻たちが手際よく調理して振る舞っています。東京都から訪れた50代の夫婦は「漁港ならではの雰囲気と、新鮮な魚を楽しみにして来た」と語ります。同店の2023年度の売り上げは1億1700万円に達し、2022年度比で3割増加しました。平日には200~250人、土日には400~500人もの来客があり、地元の賑わいにも一役買っているそうです。

また、静岡県伊東市の城ケ崎海岸富戸定置網では「漁業の日常見学ツアー」が実施されています。このツアーでは、早朝に漁師とともに船に乗り、定置網漁で魚を水揚げする様子や、その後の選別・出荷の流れを間近で体験できます。定置網漁は日本の沿岸漁業で中核をなす方法で、全漁獲量の4~5割を占める重要な存在です。この取り組みを始めた富戸定置網の社長は「漁業の現場を直接見てもらい、魚や漁業のファンを増やしたい」と期待を込めています。1年半で1000人以上が訪れ、多くが漁業の魅力を再発見しています。

こうした漁港を消費者も楽しめる場にする動きは、全国的に広がりを見せています。水産庁によると、漁港や漁村を訪れる「交流人口」は2022年度に2342万人に達し、5年前と比べて18%増加しました。直売所や飲食施設など「交流施設」も全国で1473カ所に増え、7%の伸びを記録しています。水産庁はこのような漁村の活性化を「海業(うみぎょう)」と位置付け、漁港を食や体験を通じて楽しめる場に変えていく方針を示しています。

民間企業もこうした動きに積極的に参入しています。農水産物の産地直送アプリを運営する「雨風太陽」は、2022年から「ポケマルおやこ地方留学」というプログラムを開始しました。このプログラムでは、家族で漁業や農業の現場に1週間ほど滞在し、トリ貝の養殖場見学やタコの締め方の体験、養殖マグロへの餌やりなど、地域ならではの貴重な体験を提供しています。2024年夏には参加者が前年同期比で50%増の609人に達し、子どもたちが漁業の現場を学ぶ機会としても注目されています。

しかしながら、魚の消費量は減少傾向が続いています。総務省の「家計調査」によると、2人以上世帯の生鮮魚介類の年間購入量は2023年には18.5キログラムとなり、10年前と比べて4割も減少しました。価格の高さや調理の手間が要因とされる中、雨風太陽の高橋博之社長は「漁業の現場を知ることで、魚の価格に込められた努力を理解してもらい、長期的に漁業再生につながる」と語ります。

SNSでも「地元の漁港の新しい取り組みに感動した」「新鮮な魚介類を直に味わう体験が素晴らしい」といった前向きな声が多く見られます。一方で「漁業の後継者不足も気になる」といった課題に触れる意見もあり、こうした新しい取り組みが持続可能な漁業の未来を築く一歩となることが期待されています。

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