2024年8月、日本がサウジアラビアから輸入する代表的な原油「アラビアンライト」の価格が1バレル79.36ドルとなり、7月積みと比べて6.88ドル(8.0%)安くなりました。この下落は2か月ぶりで、下げ幅としては2023年5月以来、約1年3か月ぶりの大きさとなっています。今回の値下げは、米国や中国といった主要な石油消費国の経済に不安が広がったことで国際的な原油価格が下落した影響を受けたものです。
日本が長期契約で購入する原油は、直接取引で行われる「ダイレクト・ディール(DD)原油」と呼ばれるもので、その価格はアジアの指標となるドバイ原油とオマーン原油の平均価格を基に、サウジアラビアが需給動向を考慮して調整金を加減して決定します。2024年8月のドバイ原油とオマーン原油の月間平均価格は1バレル77ドル台で、7月から7%以上の下落を記録しました。さらに、サウジアラビア国有石油会社のサウジアラムコが8月積みの調整金を引き下げたことで、価格の下落幅が一層拡大したのです。
アラビアンライトに加え、軽質の「エキストラライト」や重質の「ヘビー」など全4油種の価格がそろって下がりました。これらの下げ幅は、米国で金融不安が広がった2023年5月以来の大きさです。原油価格が下がった背景には、需要減退の懸念が広がったことが挙げられます。例えば、2024年8月上旬には米国の雇用統計が市場予想を下回り、景気の減速感が強まりました。また、中国でも原油需要の低迷を示すデータが相次ぎ、原油市場全体にネガティブな影響を与えました。8月下旬には、国際指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格が約半年ぶりの安値をつける場面も見られました。
供給面でも変化が生じています。石油輸出国機構(OPEC)プラスに加盟する一部の国々が、2024年10月から実施している日量220万バレルの自主減産を段階的に縮小する計画を発表しました。この動きは原油供給量の増加につながり、市場全体の価格をさらに抑える可能性があります。
SNSでは「原油価格の下落はガソリン価格に反映されるのか」といった声が多く寄せられており、生活への影響を気にする人々の関心が伺えます。一方で、「経済の不透明感が原油市場にも波及している」との指摘もあり、今回の価格下落がもたらす影響を慎重に見極める必要があるでしょう。