2024年9月、パリ・パラリンピックの車いすラグビー準決勝で、日本代表がオーストラリアを延長戦の末に52-51で下し、ついに決勝進出を果たしました。これにより、銀メダル以上が確定。2016年リオデジャネイロ大会、2021年東京大会と続いた「準決勝の壁」を乗り越えたこの勝利は、日本代表にとって新たな歴史を刻む瞬間となりました。
延長戦に突入し、残り1分を切ったところで、オーストラリアのエース、バット選手が日本の守備網に捕まりミスパスを出します。それを冷静にキャッチしたのは主将の池透暢選手でした。彼がそのままトライラインを駆け抜け、ボールをコートに叩きつけた瞬間、リードは2点に広がり勝利がほぼ確定しました。「勝利を確信した瞬間、思わず感情が溢れた」と語る池選手は、普段冷静な彼らしくない姿を見せ、その喜びの大きさを物語っていました。
この試合で日本は、細部まで磨き上げた守備力を存分に発揮しました。1センチの位置取りにもこだわった精緻なプレッシャーで、相手の両エース、バット選手とボンド選手にストレスを与え続けました。「一発逆転を狙うのではなく、持続的なプレッシャーで相手のミスを誘い出す作戦だった」と岸光太郎監督は語ります。
試合終盤、第4ピリオドの冒頭で池崎大輔選手がボールを失い、豪州にリードを広げられる場面もありました。しかし、ここで日本は冷静さを失わず、相手の反則を活かして同点に追いつきます。そして豪州がトライを決めれば試合終了という場面でも、両エースへのプレスでボールを奪い、試合を延長戦へと持ち込みました。
延長戦では、普段から3分間の高強度な練習を繰り返してきた成果が発揮されます。試合開始時に奪えなかったティップオフをしっかり確保し、常にリードを保つ展開を作り上げました。そして最後に池選手のビッグプレーが勝利を決定づけたのです。
このチームの12人のほとんどが、3年前の東京大会での悔しさを知る選手たちです。池主将は試合前に特別な声かけをせず、「自分たちが積み重ねてきたことに自信を持とう」という無言のメッセージを送りました。その言葉を胸に、選手たちはこれまでの努力を信じ、遂に「準決勝の壁」を打ち破ったのです。
SNSでもこの歴史的勝利への反響は大きく、「感動で涙が止まらない」「ここまで積み重ねてきた努力が実を結んだ」といった声が多く寄せられています。日本車いすラグビー界にとって記念碑的な一戦であり、彼らの活躍はスポーツを愛する人々に希望と勇気を与えました。
次は決勝の舞台。悲願の金メダルを目指す日本代表の挑戦は続きます。彼らが見せてくれる新たなドラマに、期待が高まるばかりです。