2024年9月、パリ・パラリンピックの陸上男子100メートル視覚障害T13クラスで、川上秀太選手が銅メダルを獲得しました。5月に神戸で行われた世界選手権では10秒70の日本パラ陸上史上最速タイムを記録して銀メダルに輝いた彼ですが、パリではその記録を更新できず、表彰台の頂点を逃した悔しさをにじませました。「予選と決勝でタイムを上げられず、順位も神戸から一つ落としてしまったのが正直悔しい」と語り、目標としていた金メダルへの思いを明かしました。
初のパラリンピック出場という大舞台に、川上選手は「めちゃくちゃ緊張したし、力みもあった」と振り返ります。予選のタイムは10秒80。決勝ではスタートから4歩目までの動きは練習通りにこなしたものの、「舞台に慣れておらず、周りの選手を意識してしまった」と話し、予選と同じタイムに終わりました。それでも、隣のレーンの選手との終盤の競り合いを制し、タイム差はわずか0.005秒。決定打となったのは、左足太ももの肉離れ以来封印していたフィニッシュで胸を突き出す動作でした。「コーチから『パラリンピックの決勝の舞台だけは許す』と言われた」とし、胸の差で勝利を掴んだことに安堵の表情を浮かべていました。
川上選手がパラ陸上に転向したのは社会人になってからのことです。中学から陸上競技を始め、大学までは健常者の世界でスプリンターとして活躍してきた彼は、「健常者と障害者が互いに高め合える大会を作りたい」と語り、その実現を目指しています。「その未来を引っ張っていける存在になりたい」と力強く宣言しました。
次なる目標は、陸上日本選手権の参加資格記録である10秒34の達成です。「この記録は確実に出したい」と意気込みを見せ、その記録が実現すれば、4年後のパリで目指す頂点に一歩近づくことでしょう。
SNSでも「わずか0.005秒差の勝利はドラマチックすぎる」「健常者と障害者の垣根を超える川上選手の姿勢に感動」といった声が多数寄せられ、多くのファンが彼の挑戦に心を動かされています。今回の銅メダルは彼にとって通過点でしかありません。川上選手が見据える未来と、さらなる高みを目指す走りから、私たちはこれからも目が離せません。