外交を前面に!自民党参院選公約が示す「令和の国家像」と新技術・改憲への姿勢【2019年】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

2019年6月7日、自民党は、この夏の参議院選挙に向けた公約を発表いたしました。その最大の特徴は、公約の構成において「外交・安全保障」を最前面に打ち出している点にあります。これは、公約発表直前に安倍晋三首相が議長を務める「G20大阪サミット」(主要20カ国・地域首脳会議)などの重要な外交日程が控えている流れを強く意識したものと推察されます。

当時の首相は、6月12日から14日にかけて、日本の首相として41年ぶりとなるイラン訪問を実現させ、緊張が高まるアメリカとイランの間で仲介役を担うことを目指すなど、精力的な外交活動を展開されていました。さらに、同月28日と29日には国際的な注目を集めるG20大阪サミットが開催される予定でした。この注目度の高い外交イベントの直後に参院選が続くという政治日程を最大限に活かし、政権の「継続性」や「国際社会でのリーダーシップ」を強く訴えかける戦略が見て取れます。政策研究大学院大学の竹中治堅教授も、「米中貿易摩擦をはじめとする外交課題が多い中、政権の継続を強くアピールする意図があるのではないか」と分析されているようです。

公約のキャッチフレーズは「日本の明日を切り拓く」で、項目は(1)外交・安全保障(2)経済再生(3)人生100年時代(4)地方創生(5)災害対策・国土強靱(きょうじん)化、そして(6)憲法改正の六本柱で構成されております。党の岸田文雄政務調査会長は記者会見で、「『令和の時代』をどのように切り開くのか、その国家像を有権者の皆様に見ていただき、新しい時代の日本の姿を選択していただく選挙である」と、今回の参院選の意義を強調されました。

一方、安倍首相がかつて2020年を施行目標として表明していた「新憲法」の具体的な施行時期については、今回の公約では明記を避け、「早期の憲法改正を目指す」という表現に留められています。これについて、自民党の二階俊博幹事長は6月7日、北海道帯広市で記者団に対し、「国民の声を謙虚に聞くという姿勢で結構だ」「謙虚に国民に寄り添う姿勢が大事だ」と述べられており、改憲への意欲は示しつつも、拙速を避けて国民的な議論を深める姿勢を重要視していることがうかがえます。

デジタル技術を活用した「未来型経済」への意欲

今回の公約では、経済政策の柱の一つとして、情報技術(IT)や人工知能(AI)といったデジタル技術の活用を強く打ち出している点も注目に値します。具体的には、あらゆるモノがインターネットに接続される「IoT」(Internet of Things)やAIなどの先端技術を駆使することで、深刻化する「人手不足」や「少子高齢化」といった日本の構造的な課題を解決すると力説されています。また、世界的なIT企業間で競争が激化している「データ流通」の分野において、日本が公平・公正なルール形成を主導していくという意欲も示されました。

さらに、人手不足が顕著な物流や建設業を支援するため、自動運転技術の普及を目指すことや、次世代の高速通信規格である「5G」を活用した農業や教育分野での技術革新を推し進める方針も掲げられています。私見ですが、この「デジタル技術の積極活用」という方針は、単なる経済成長だけでなく、国民一人ひとりの生活の質の向上と、日本の社会構造そのものの変革を見据えた、極めて先進的なビジョンであると言えるでしょう。

また、景気の現状を鑑みても大きな議論となっている、同年10月に予定されている「消費税率10%への引き上げ」については、公約に予定通り実施すると明記されました。これに伴い、「全世代型社会保障」の実現や「財政健全化」に向けて、増税の影響を緩和するための十分な対策を実施することも強調されています。これは、未来への責任を果たすための財政基盤強化と、国民生活への配慮を両立させるという、政府与党の強い決意を示すものと解釈できます。

子どもの安全確保と働き方改革への具体的な対策

公約の「安心・安全」の項目では、近年相次いで発生した痛ましい事件・事故への対策が、重点的に取り上げられています。具体的には、同年に入って大津市で発生した保育園児が巻き込まれた交通事故や、子どもが犠牲となる児童虐待事件などが社会的な関心事となっていることを受け、今回は「子どもの未来・安全に大胆に投資」することを強く打ち出されました。

この公約には、子どもの通学路や通行路の安全を確実に確保すること、そして高齢運転者による悲惨な交通事故を防止するための対策を強化することなどが盛り込まれています。子どもの安全を守るというテーマは、2016年の参院選公約でも「児童虐待の早期発見」として言及されましたが、今回はより具体的かつ「大胆な投資」として強調されており、この問題に対する政府の強い危機感と対応への切実な思いが読み取れるのではないでしょうか。このほかにも、長時間労働の是正や、場所や時間にとらわれない働き方を可能にする「テレワーク」の普及など、「働き方改革」の実現も改めて掲げられました。

全体として、この公約は、直前の外交イベントの成功を背景に政権の継続性をアピールしつつ、AIや5Gといった未来技術の導入による社会変革、そして長年の懸案である憲法改正への意欲を示した、多岐にわたる政策を網羅した内容であると言えます。国民の皆様には、この公約をしっかりと精査し、「令和の時代」の日本がどの方向へ進むのか、その針路を決める一票を投じていただきたいものです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*