直観の力で未来を拓く!野中郁次郎氏が「知識創造理論」を進化させる経営哲学とは?

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2019年6月8日に発売された書籍『直観の経営』は、経営学の権威である野中郁次郎氏と、哲学者の山口一郎氏の共著であり、ビジネス界で大きな話題を呼んでいます。野中氏といえば、企業を**「知識を創造する組織体」と捉える「知識経営論」で国際的な評価を確立されています。特に、組織における知識創造のプロセスを説明する「SECI(セキ)モデル」は、多くのビジネスパーソンにとって常識となっており、「暗黙知を形式知に変換しなければならない」といった会話が企業内で頻繁に交わされるほど浸透しているのです。

しかし、この最新作には、従来の知識経営論をさらに深め、強固な基盤を与える新たな視点が盛り込まれています。それは、人間の主観的な経験や知覚を重視する「現象学(げんしょうがく)」の考え方を、野中氏が知識理論の強化のために、以前にも増して積極的に取り入れた点にあります。哲学を専門とする山口氏による現象学の解説も相まって、読者はこの新しい概念を深く理解できるようになっていることでしょう。

「分析主義」から「意味づけ・価値づけ」へ

野中氏がこの著作で強く訴えているのは、従来の経営学が陥りがちだった、計画的で論理的な「分析主義」への批判です。氏は、単なる因果関係の分析に留まるのではなく、物事に「意味づけ」や「価値づけ」を与えることの重要性を強調し、その思考を深めるために現象学的思考へと向かいます。そこで鍵となるのが、哲学的な手法である「現象学的還元(げんしょうがくてきかんげん)」です。これは、先入観や前提を取り払い、物事を「ありのままの経験」として捉え直すという考え方です。

そして、現象学から導き出された重要な概念こそが「本質直観(ほんしつちょっかん)」です。これは、分析や論理を超越し、物事の核となる本質を瞬時に把握する能力を指します。本書では、本田宗一郎氏、稲盛和夫氏、御手洗冨士夫氏、柳井正氏といった、日本を代表する経営者たちが、この本質直観によって未来の壮大な構想を描き、実現してきた事例を挙げています。例えば、御手洗氏がバランスシートの分析を重視しつつも、リーダーが「物語」を描く重要性を説いたことは、「直観の経営」の好例といえるでしょう。

共感から生まれるイノベーション:直観と知識のダイナミズム

直観から得られる、言語化されていない個人の感覚的な知識、すなわち「暗黙知」は、現象学における「受動的綜合(じゅどうてきそうごう)」、つまり意識せずに行われる統合作用に対応しています。一方、論理的で体系化された「形式知」は、意識的に統合する「能動的綜合(のうどうてきそうごう)」に照応する概念として位置づけられています。これら二つの知識の統合作用が、組織の成長を促す基盤となるのです。

さらに、野中氏は、組織のメンバーが自身の直観を通じて他者と共鳴し合うことで生まれる、感性で共有された感覚を「共感」と呼びます。この共感を通じて、個人を超えた「相互主観性(そうごしゅかんせい)」、つまり個人の主観的な理解が、他者と共有された客観的な意味として成り立つ状態が生まれ、それがイノベーションを生み出す源泉になると提言しています。

生き方としての戦略:新しい「動態経営論」を読み解く

野中氏は、単なる計画策定ではない、より深いレベルでの戦略のあり方を提示しています。戦略とは、因果関係の分析にとどまらず、未来に向けた明確な目標を持ち、その実現のための手段を、企業を取り巻く文脈や人との関係性の中で志向し、知恵を共に創造し、実践していく「生き方」に他ならないと述べているのです。評者の田中洋氏(中央大学教授)も述べている通り、この著作は、知識経営論を深く理解している方々にとっても、その概念をさらに推し進めた「動態経営論(どうたいけいえいろん)」**を理解するうえで非常に有用な一冊となるでしょう。この本は、野中氏の現在の思考の核心を知るために欠かせない著作であるに違いありません。

この書籍の内容は、すぐにSNS上でも大きな反響を呼びました。「直観と現象学を結びつける視点が新しい」「難解な哲学が経営に活かされることに感動した」といった声が多数見受けられ、特に「戦略は生き方だ」という野中氏の言葉に感銘を受け、「自分の仕事への向き合い方を考え直すきっかけになった」と投稿するビジネスパーソンも多く、その関心の高さがうかがえます。企業のあり方、そして経営者の「生き方」そのものを見つめ直すためにも、手にとっていただきたい一冊です。

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