2024年9月2日、2023年の技能実習生の失踪者数が9,753人と過去最多を記録したことが、出入国在留管理庁への取材で明らかになりました。この数字は前年より747人増加しており、在留資格を持つ実習生全体の約1.9%に相当します。制度の運用を巡る問題が浮き彫りとなり、失踪者増加の背景には人権侵害や過酷な労働環境があると指摘されています。
技能実習制度は、労働者が同一の職場で計画的に技能を習得することを目的としていますが、原則として転職が認められないため、不満を抱える実習生は辞めるか、失踪して違法就労に走るしか選択肢がない状況に陥りがちです。この制約が、労働環境の改善を阻み、人権侵害を助長してきたと批判されてきました。
これに対応するため、出入国在留管理庁は2027年までに新制度「育成就労」を導入し、2年以上働いた実習生が自らの意思で転職できる仕組みを整える予定です。また、現行制度の改定として、2024年秋に運用要領を改正し、暴力やセクハラ、パワハラ、妊娠や出産に伴う嫌がらせが確認された場合に転職を認める基準を明確化する方針を発表しました。さらに、転職手続き中にアルバイトを週28時間まで許可するなど、実習生が生活費を得やすくする新たな運用も開始されます。
このような動きに対し、実習生を支援するNPO法人「日越ともいき支援会」の吉水慈豊代表理事は、転職をしやすくすることで失踪防止につながる可能性があると評価する一方で、「日本語力が不十分な実習生にとって新たな就労先を見つけるのは大きな負担」と懸念を示しました。特に、監理団体や外国人技能実習機構が実習生の転職支援を責任を持って行うことが重要であると述べています。
SNSでは「制度改善が進むのは歓迎すべきこと」「実習生の人権を守る仕組みが必要」といった声が上がる一方、「失踪者数の増加は日本社会全体の責任を反映しているのでは」といった議論も巻き起こっています。
技能実習制度は人手不足解消の一翼を担う重要な仕組みですが、その運用に伴う課題も多いのが現状です。今後、転職支援の強化や人権保護を中心に据えた制度改革が進むことで、実習生が安心して働ける環境が整い、失踪問題が減少することが期待されます。
技能実習生の失踪、国別統計でミャンマーが急増―背景に緊急避難措置と自由な就労環境への希望
2024年9月、出入国在留管理庁が公表した2023年の技能実習生失踪者数を国別に見ると、最多はベトナムの5,481人で、全体の約56%を占めました。次いで、ミャンマーが1,765人、中国が816人、カンボジアが694人と続いています。特に注目すべきは、ミャンマー出身の失踪者が前年の約2.9倍に急増したことです。
ベトナムは前年の6,016人から減少したものの依然として高い数値を示しており、技能実習制度の課題が根強いことを浮き彫りにしています。一方、ミャンマーの急増の背景には、2021年2月に発生した国軍によるクーデター後の政治的混乱があるとされています。日本政府は、ミャンマー人の保護を目的として、就労制限のない在留資格「特定活動」での滞在を認める緊急避難措置を導入しています。しかし、この制度が実習生にとってより自由な働き方を可能にする選択肢として捉えられ、技能実習期間中に特定活動への移行を目指して失踪するケースが少なくないとみられます。
これを受け、入管庁は今後、特定活動への資格切り替えを希望するミャンマー人に対して、申請理由や状況を詳しく聞き取る方針を示しました。技能実習が困難な事情がない場合には、実習の継続を促すことで、失踪を抑制する意向です。ただし、この対応にはさらなる配慮が求められるでしょう。
SNS上では、「失踪が多いのは制度に根本的な問題がある証拠」「ミャンマーの状況を考えると避難措置は理解できるが、実習生へのサポートが不十分」といった意見が見られます。また、「特定活動への移行が逃げ道として使われている状況を放置してはいけない」といった声もあり、多くの議論を呼んでいます。
技能実習制度は、労働力不足を補うだけでなく、国際交流や技術移転の場として期待されていますが、現状では多くの課題を抱えています。特に、実習生の人権や就労環境をどのように改善し、制度の信頼性を高めるかが問われています。ミャンマーをはじめとする外国人実習生が安心して働ける環境の整備は、日本社会の責任と言えるでしょう。今後の政策変更とその効果に注目が集まります。