2019年5月、米商務省が中国の巨大通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ)を禁輸措置の対象リストに追加したことを受け、半導体製造装置大手、SCREENホールディングス(以下、SCREEN)の株価が急落し、その先行きに暗雲が漂っています。この禁輸措置、つまり米国企業による特定製品の輸出・取引を制限する措置が、SCREENの業績にどれほどの打撃を与えるのでしょうか。
米ゴールドマン・サックスは、2019年5月29日付のリポートで、この禁輸措置がSCREENの営業利益(企業が本業で稼いだ利益を示す指標)を5%押し下げると試算しました。これは同業の東京エレクトロン(東エレク)の3%よりも影響が大きいものの、アドバンテスト(アドテスト)の11%と比較すると小さいとの見方です。
SCREENは、半導体の材料であるウエハーを洗浄する「枚葉洗浄装置」という分野で、世界シェア約4割を誇るトップ企業です。半導体の製造工程は数百にも及びますが、そのうちの約3分の1が洗浄関連とされており、洗浄装置の性能が半導体の生産性を左右するほど重要です。この高い技術力により、同社の取引先は台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする世界の主要メーカーに広がっていると見られています。
しかし、実は市場がSCREEN株に対して懐疑的なのは、ファーウェイ問題といった外部要因だけではなく、同社が抱える本来の収益力にあると考えられています。2018年(暦年)の世界の半導体製造装置の販売額が過去最高水準に達したにもかかわらず、SCREENの2019年3月期連結営業利益は296億円と、前期から31%も減少してしまいました。
この減益の大きな原因として、「採算性の悪化」が挙げられます。基幹部品(製品の根幹をなす重要な部品)が不足する中で、納入を優先するために高価格の部品を調達した結果、約130億円もの減益要因となったのです。垣内永次社長は、この状況を「サプライチェーンマネジメントがうまくいかなかった」と説明しています。サプライチェーンマネジメントとは、部品の調達から製品が消費者に届くまでの全体の流れを一貫して管理する仕組みのことです。
収益改善は急務!低い利益率と構造改革への挑戦
前期の売上高営業利益率(売上高に対して営業利益が占める割合で、収益力の高さを示す指標)は8%にとどまっています。得意とする装置分野は異なるものの、東エレクの24%やアドテストの23%といった同業他社と比較すると、見劣りしているのが現状です。「昔からの安易な値引き体質が利益率の低さにつながっている」という国内証券による厳しい指摘もあり、収益構造の抜本的な改革が急務となっています。
SNS上でも、「世界トップシェアなのにこの利益率はどういうこと?」「値引き癖を直さないと、いつまでも東エレクの背中は見えないのでは」といった収益体質に対する懸念の声が上がっているようです。技術力は世界トップクラスであるだけに、この収益力の低さは非常に残念に思えるでしょう。
このような状況を打開し、利益を改善するためにSCREENが推進しているのが**「彦根グランドデザイン」プロジェクトです。同社は、約90億円を投じ、滋賀県にある彦根事業所に最新の自動化設備を導入しています。これにより、従来よりも従業員数を3割以上削減し、納期を半分に短縮する効果を目指しているといいます。周辺工場との連携も深めることで、沖勝登志常務は「(2020年3月期は)数十億円レベルで原価低減できる」と自信を見せています。 この思い切った生産性改善への投資が、市場の懐疑論を払拭する鍵となるでしょう。
SCREENの創業は、明治元年である1868年に京都で開いた印刷所が祖業という、非常に長い歴史を持っています。半導体製造装置事業に参入したのは1970年代で、この事業は市況サイクル**(景気の波)に揉まれながらも、今や連結売上高の7割を占めるまでに成長しました。令和の時代という新たな波を乗り越え、真の収益力を備えたグローバル企業へと変貌を遂げるためには、創業150年を超える歴史の中で培ってきた技術力に加えて、今こそ大胆な構造改革が求められているのではないでしょうか。