27歳の新市長が挑む、大館市の未来──変革を求めた若者の決意

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2024年9月1日に行われた秋田県大館市の市長選で、新人の石田健佑氏(27)が接戦を制し、全国最年少の市長として新たなスタートを切った。現職市長の辞職に伴う選挙戦は、実に33年ぶりに新人同士の一騎打ちとなり、石田氏は前市長が支援する元市議・日景賢悟氏(55)をわずか300票余りの僅差で破る劇的な勝利を収めた。

石田氏が掲げたのは、「若者がまちに残りたいと思える環境をつくる」という明確なビジョンだ。現代の地方都市が直面する人口減少や高齢化の課題を前に、彼は新たな仕事や産業の創出を通じて地域の活性化を図ろうとしている。この若さゆえの行動力と変革への意欲が、多くの市民の支持を集めた。

もともと石田氏は東京都で企業勤めや起業を経験し、2019年6月に双子の弟・陽佑氏とともに昆虫事業を展開する「TOMUSHI(旧リセット&マラソン)」を大館市で立ち上げた。ヘラクレスオオカブトなどの昆虫をEC(電子商取引)サイトで販売することで、ITの知識を活かしながら新たなビジネスを確立。その後、2022年頃からは、シイタケの廃菌床といった有機廃棄物を飼料として活用し、昆虫を飼育するという持続可能な事業へと発展させた。廃棄物のリサイクルを通じた社会課題の解決に取り組むこのビジネスは、環境意識の高まりと相まって注目を集めた。

弟の陽佑氏が東京を拠点に事業の拡大を進める一方で、石田氏は地元に残り、地域活性化の道を模索した。そして2023年4月の大館市議選に初出馬し、4000票以上を獲得してトップ当選を果たす。そこからわずか1年半での市長選勝利は、地域に根ざした彼の熱意が多くの市民に伝わった証だろう。

大館市は、忠犬ハチ公のふるさととして知られる一方で、深刻な人口減少と高齢化に直面している。2024年7月末時点での人口は6万6600人を下回り、2014年と比べて1万人以上の減少。65歳以上の高齢化率も40%を超えている。このままでは地域の存続そのものが危ぶまれる状況だ。

「新しい仕事や産業を生み出し、若者が住み続けたいと思えるまちをつくる」という石田氏の決意の背景には、こうした危機感がある。彼の行政手腕は未知数ではあるが、前例にとらわれず、変革を求める市民の期待に応えることが求められる。SNSでは、「27歳の若き市長に期待!」「新しい風を吹き込んでほしい」といったポジティブな声が多く見られ、若者の挑戦を応援するムードが広がっている。

経験よりも変革を選んだ市民の決断が、大館市にどのような未来をもたらすのか。若きリーダーの手腕が試される新たなステージが、今まさに始まろうとしている。

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