東京都は2025年3月を目標に、学校や保育施設、家庭内で発生する子どもの事故情報を集約したデータベースを部分公開し、4月以降に本格運用を開始します。これまで各省庁が個別に収集していたデータを一元化し、保護者だけでなく、大学や企業が研究や製品開発に活用できる仕組みを整えることで、事故の再発防止につなげる狙いです。
例えば、生後3か月頃の赤ちゃんが手足をばたつかせるうちにソファから転落するケースや、ベランダからの転落による死亡事故など、都内では深刻な事例が相次いでいます。東京消防庁の調査によると、2022年に「落ちる」事故で救急搬送された0~4歳児は2,150人に上り、事故防止の対策が急務となっています。しかし、現状では救急搬送データは東京消防庁、保育施設での事故情報はこども家庭庁、製品に関する事故は消費者庁と、各機関にデータが分散しており、子どもに特化した情報の集約が行われていませんでした。
東京都は、「チルドレンファースト」の社会実現を掲げ、こうした分散したデータを一元化する必要があると判断しました。データベースの構築は、約2億3,800万円で富士通Japanが受託。オープンデータの取り込みに加え、一部機関からのデータ提供の了承も得ています。
背景には、子どもの救急搬送件数が依然として減少していない現状があります。東京消防庁の統計によると、2022年の0~4歳児の救急搬送数は7,714人で、3年前と比較して8%の減少にとどまっています。一方で、5~9歳の搬送数は3,692人と5%増加しており、家庭内や遊び場での事故が依然として多発していることが分かります。都が保護者に「子どもの事故が減らない理由」を調査したところ、「子どもの行動が予想を超えている」と答えた人が63%に上り、事故防止にはより具体的な情報提供が求められています。
データベースは特設サイトで一般公開され、事故の種類や子どもの年齢ごとに検索できるようにし、発生状況やケガの程度なども詳細に把握できる設計です。さらに、子どもにも分かりやすいよう、グラフや図を活用して情報発信を行う予定です。また、ユーザーが質問を入力するとAIが回答する対話型システムの導入も検討されており、2024年度中に機能検証を行い、2025年度中の実装を目指します。
SNSでは、「こういうデータが一元化されるのは助かる」「子どもの事故が減るきっかけになればいい」「保護者向けに実践的な対策も知りたい」といった期待の声が寄せられています。東京都は独自に子どもの事故研究も進めており、2023年度は「転落」をテーマに、保護者アンケートや家具の転倒リスク調査を実施。保育園では実際に子どもがよじ登れる高さやかかる力を測定し、70センチメートル以上の高さでも登ることができると明らかになりました。こうした研究結果をもとに、家具の固定や床の材質見直しなどを提案しています。
データベースが完成すれば、こうした研究の精度が向上し、より効果的な事故防止策を打ち出せるでしょう。都は、大学や研究機関、企業にも利用を呼びかけ、子どもが安全に過ごせる環境づくりを推進していきます。