東海理化、車内の子ども置き去り防止装置を2024年内に開発へ スマホ連携で低コスト実現

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東海理化は2024年内にも、車内に取り残された子どもを検知し、周囲に通知する装置を開発します。この新技術には、スマートフォンでドアロックを開閉できる「デジタルキー」のシステムを活用し、低コストでの実現を目指しています。近年、日本国内では通園バスや自家用車内に子どもが取り残され、熱中症で死亡する事故が相次いでいますが、こうした機能は海外でも求められており、開発のスピードが加速しています。

東海理化の本社(愛知県大口町)に設置された車室模型では、車内に配置された人形の呼吸を再現すると、頭上の小型装置がそのわずかな動きを検知し、モニターに波形が表示されました。これは、超広帯域無線(UWB)技術を利用したセンサーが生体の存在を正確に感知できる証拠であり、子どもが車内に取り残された際に即座に警告を発する仕組みです。

すでに2023年3月、東海理化は通園バス向けに、エンジン停止後に音声案内が流れ、車内後方のボタンを押すことで確認作業を促す装置を発表しています。今回開発する新型装置は、よりコンパクトな乗用車向けの検知システムで、同社が得意とするデジタルキー技術を活用。スマホの位置情報や車のロック状況と連動し、車内に子どもが取り残されたと判定すると、ハザードランプの点滅や音声アラームで周囲に警告を発します。さらに、保有者のスマホに通知が送られるだけでなく、アプリに登録した家族や関係者にも位置情報付きのメールを送信する機能を搭載予定で、本人が気付かない場合でも周囲が迅速に対応できる仕組みです。

この装置の大きな特徴は、既存のデジタルキーシステムを基盤とすることで、新たな専用機器を必要とせず、導入コストを抑えられる点です。現在開発中のデジタルキー用システム基板には、すでに3つの受信アンテナが搭載されており、そこにレーダー機能を追加するだけで済むため、「キーシステムにプラス数千円程度」(東海理化)という価格設定を想定しています。

また、同社は乗用車向けに「ミリ波レーダー」を用いた検知装置の開発も行っています。ミリ波はUWBと比べて高周波で車内全体をカバーできる一方、基板や部品のコストが高くなりがちです。UWBはコンパクトカー向けに最適化され、検知範囲は後部座席に限定されますが、安価で後付けも可能な利点があります。

今回の技術開発の鍵となるのは、スマホと子どもの位置を正確に把握する精度です。東海理化は、キーシステム向けに、最小限の装置数でスマホの位置を特定できるアンテナ技術を研究しており、対象との距離だけでなく角度まで推定できるようになりました。これにより、コストを抑えつつ、スマホや子どもが車内にいるかどうかを高精度に判別するシステムを実現しています。さらに、独自のアルゴリズムを活用し、わずかな動きでも検知性能を向上させました。

子ども置き去り事故はバスのイメージが強いものの、実は乗用車でも多発しています。保護者が「子どもを保育所に預けたつもり」で車内に取り残してしまうケースが後を絶ちません。日本自動車連盟(JAF)が2022年末から2023年初めにかけて実施した調査では、約250人のうち「子どもを残して車を離れたことがある」と回答した割合が約55%に達しました。その理由として、「すぐ戻る予定だった」という声が多かった一方で、「寝ている子どもを起こしたくなかった」「子どもの存在を忘れていた」との回答も見られました。

JAFの実験では、外気温が23~24度程度の日でも車内の温度は最高46度まで上昇し、子どもは「暑熱順化」(暑さに体を慣らすこと)が不十分なため、熱中症のリスクが非常に高いことが示されています。

海外でもこうした技術の重要性は高まっており、欧州の自動車性能評価機関「Euro NCAP」では、2023年から子どもの置き去り検知システムが評価基準に加えられました。各メーカーはこの基準に対応する必要があり、東海理化の技術が今後どのように活用されるのか注目されています。技術開発センターの長尾貴史氏は「2024年内に開発を完了し、各自動車メーカーと具体的な話を進めていきたい」と語っており、気温上昇が世界的な問題となる中で、各国の需要にどう対応していくかも大きな課題となりそうです。

SNSでは「これが標準装備になれば悲しい事故を防げる」「スマホ連携でコストを抑えられるのは画期的」「乗用車でも義務化すべき技術」といった声が上がっており、社会全体での安全対策の強化に期待が寄せられています。子どもを守るためのテクノロジーが、今後どこまで普及するのか、引き続き注目されるでしょう。

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