2024年8月末から9月初めにかけて猛威を振るった台風10号が、中部地方の観光や産業に深刻な影響を及ぼしました。特に観光業界では、台風による客足の減少が響き、岐阜県白川村の世界遺産・白川郷では観光客数が通常の2~3割減少し、ホテルのキャンセルも相次ぎました。8月上旬には南海トラフ地震に関する「巨大地震注意」の発表もあり、観光業界にとっては「思わぬ打撃」となりました。
岐阜県では台風接近を受けた旅行キャンセルが続出し、白川郷の観光協会によると「バスツアーの空席が目立ち、観光客の減少が顕著だった」とのことです。また、高山市の「ホテルアソシア高山リゾート」では、西日本からの団体客の一部がキャンセルし、影響を受けました。同様の動きは三重県でも見られ、鳥羽市の「鳥羽シーサイドホテル」では8月26日から9月1日にかけて宿泊キャンセルが発生。8月最後の週末は集客のピークを迎える時期でしたが、「かき入れ時に台風が直撃したのは痛手だった」と関係者は肩を落としました。
観光業界では、台風による客足減少を取り戻そうとする動きもあります。愛知県蒲郡市のテーマパーク「ラグーナテンボス」では、8月26日から31日の来客数が前年同期比で半減。この影響を受け、同施設は9月21日と22日にナイトプールの追加営業を決定しました。担当者は「台風の影響で来場できなかった方にも楽しんでほしい」と意気込んでいます。
観光客の減少は、鉄道の運休が大きな要因となりました。JR東海によると、東海道新幹線は東京~新大阪間の直通運転を8月29日夕方から9月1日夕方まで約3日間取りやめました。これにより、名古屋駅直結の「名古屋マリオットアソシアホテル」では、予定されていた宴会の半数以上が延期となるなど、ビジネス需要にも影響が及びました。JRの在来線でも大規模な運休が発生し、8月30日から31日にかけて東海道線、関西本線、飯田線などで計636本が運休。影響を受けた利用者は約7万5,000人に上りました。また、名古屋鉄道も8月31日と9月1日の2日間で三河線や知多新線など計1,132本の運転を見合わせ、影響を受けた利用者は13万人に達しました。
台風10号の影響は製造業にも及びました。トヨタ自動車は9月2日、従業員の安全確保を考慮して停止していた国内全14工場の稼働を同日夕方から再開すると発表。8月28日からの稼働停止により、関連する部品メーカーにも影響が出ていましたが、アイシン九州(熊本市)も2日午前から操業を開始し、ジェイテクトも同様に再開を決定しました。
中部経済連合会の水野明久会長は9月2日の記者会見で「中部地方は日本のものづくりの中心であり、この地域の産業活動が停止すると、世界経済にも影響を及ぼしかねない」と述べ、企業の防災・減災対策の重要性を強調しました。SNSでは「観光業の打撃が大きいが、復活のための対策に期待」「鉄道の運休が長引くと影響は全国に広がる」「工場の停止でサプライチェーンにも波及しそう」といった声が上がっており、台風の影響が今後どのように回復していくのか注目が集まっています。