2019年6月12日現在、日本の段ボール市場は非常に活況を呈している状況です。特に段ボール原紙の国内出荷は好調を維持しており、その勢いは止まるところを知りません。この需要を力強く牽引しているのは、やはり電子商取引(EC)、すなわちインターネット通販の急速な普及による宅配需要の拡大に他ならないでしょう。
実際、国内の段ボール工場は軒並み「フル操業」の熱気に包まれています。大手製紙会社のレンゴー八潮工場長である西村修氏も、その主力工場でのフル操業が続いていることを認めているほどです。この旺盛な需要を背景に、レンゴーをはじめとする各社が昨年秋から打ち出していた段ボールシートや製品の値上げも、本年4月にはほぼ市場に受け入れられ、決着した模様です。
日本国内における段ボール原紙の出荷量は、目覚ましい伸びを見せています。日本製紙連合会が発表したデータによりますと、2019年4月の段ボール原紙の国内出荷は、前年の同じ月と比べて4.1%も増加し、83万トンに達しました。青果物や飲料向けの伝統的な需要が堅調であることに加え、ECの普及によって小口配送が爆発的に増加していることが、この追い風を生み出している最大の要因であると考えられます。
一方で、段ボールの製造に欠かせない原材料である段ボール古紙の市場は、現在も厳しい低迷が続いているのが現状です。その原因として、最大の輸出国である中国向けの輸出が鈍化していることが挙げられます。中国政府が環境規制を強化し、輸入古紙に対する品質基準を厳しくした影響で、行き場を失った古紙が国内に滞留し、在庫が増加。結果として古紙価格が低水準で推移している状況です。
国内の段ボール需要の高さと、古紙価格の低迷という二極化する状況に対し、製紙業界の各社は成長が確実に見込める段ボール事業への投資を急ピッチで進めています。北越コーポレーションは新たに段ボール原紙市場への参入を表明し、また王子ホールディングスも傘下の王子製紙の工場設備を段ボール原紙の製造へ転用する計画を打ち出しています。これは、将来的な市場の拡大を見据えた、極めて戦略的な判断と言えるでしょう。
しかし、このような設備増強の動きに対して、一部では慎重な見方をする意見も出ています。ある外資系証券会社のアナリストは、各社が一斉に設備を増強した結果、「需給バランスが緩み、供給過多になるのではないか」という懸念を示しています。現在の国内需要は極めて好調ですが、将来的に増強された設備がフル稼働した際に、この需給ギャップが顕在化する可能性は否定できません。
これらの状況について、SNS上では「EC利用が本当に増えているのを実感する」「毎日届く段ボールの量がすごい」といった、国内の旺盛な段ボール需要を裏付けるような共感や、物流の現状を語る声が多く見受けられます。一方で、「中国の規制で古紙の行方が気になる」「リサイクルが追いつかないのでは」といった、古紙低迷と環境問題に対する懸念も同時に話題となっています。
私見ですが、この市場の動きは、日本の産業構造がECを中心としたデジタル経済へと本格的に移行していることの明確な証左であると感じます。段ボールは単なる梱包材ではなく、現代のサプライチェーンを支えるインフラとしての役割を担っているのです。ただし、各社の設備増強による「供給過多」の懸念は、冷静に注視すべき重要な論点であり、今後は国内需要だけでなく、新たな輸出先や用途開拓といった多角的な戦略が、製紙業界に求められてくるのではないでしょうか。