2019年6月12日現在、日本は間近に迫ったG20大阪サミットや東京五輪・パラリンピックといった国際的な大イベントを控え、その警備体制に全国の警察が全力を注いでいます。その中でも特に、ドローン(小型無人機)による違法飛行への対策が、いま警察にとっての極めて重要な課題として浮上しているのです。ドローン技術の高性能化が進むにつれ、不意に現れる機体を即座に発見し、捕獲することの難しさが深刻化しています。
実際に大阪府警は、2019年に入ってからドローンの違法飛行をすでに5件も摘発しており、これは2018年全体の2件を既に上回るペースで増えています。例えば、大阪城公園で無許可でドローンを飛ばしたとして、30代の米国籍の男性が航空法違反容疑で書類送検された事例もあります。この男性は「大阪城を空中から撮影したかった」と供述しているとのことですが、こうした「違法と知らずに飛ばす」外国人観光客による事案が多い一方で、海外要人が集まるG20サミットでは、空からのテロにも最大限の警戒が必要となります。
この国際的な緊張感を受け、大阪府はG20サミットを前に、関西国際空港の周囲1キロメートルや、会場のある人工島の咲洲(さきしま)の周囲300メートルなどを対象に、罰則付きの条例でドローンの飛行を制限しています。特に重要なのは、航空法では飛行時の届け出が不要な重量200グラム未満のドローンまで規制対象に含めて強化している点でしょう。大阪府警の幹部も「会場周辺で飛行させないよう、広報や啓発に力を入れたい」と述べ、市民への周知徹底を図っている様子が伺えます。
急ピッチで進む警察の「対ドローン」対策部隊と技術
違法ドローン対策への注目が格段に高まったのは、2015年に首相官邸の屋上でドローンが発見された衝撃的な事件がきっかけでした。これを機に、警視庁は同年、ドローンを大型ドローンで捕獲する専門部隊、無人航空機対処部隊(IDT)を発足させました。この部隊は、網を打ち上げて機体を絡め取る「ネット発射装置」や、電波を使って操縦を不能にする「ジャミング(電波妨害)」装置を順次導入しています。
例えば警視庁は2019年5月にも違法飛行の一斉摘発に乗り出し、東京都江戸川区の公園でドローンを無許可で飛ばしたとして、自称解体工の男性(52歳)を航空法違反容疑で逮捕するなど、摘発に力を入れています。しかし、IDTの出動は重要行事に合わせたものが多く、広い範囲を常に警戒し続けるのは困難なのが実情です。夜間ともなると、機体が発するわずかな光や音だけが唯一の手掛かりとなるため、捜査幹部でさえ「目視による探知や追跡を即座に行うには限界がある」と、その苦悩を語っています。
高性能化するドローンの利便性と脅威のジレンマ
ドローン技術は日々進化しています。2018年に全地球測位システム(GPS)の精度向上を担う準天頂衛星「みちびき」の運用が始まって以降、GPSの誤差は数メートルからセンチ単位にまで縮まりました。これに伴い、ドローンの飛行精度が格段に高まり、積載能力も向上したことで、ビジネス、災害対策など幅広い分野での活用が期待されています。
しかしながら、その高い性能が悪用された場合の脅威もまた増しているのです。2018年8月には南米ベネズエラで、爆弾を搭載したドローンが要人を狙うという、恐ろしい事件が発生しました。このような海外の事例を見ても、ドローンの進化がもたらす便益と、それが引き起こすかもしれない危険性は、まさに表裏一体のジレンマだと言えるでしょう。私たちはこの高性能な技術を、どう安全に管理していくかという、重い課題に直面していると言えるのではないでしょうか。
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世界から学ぶ!喫緊の課題となる「不審ドローン対策」
元警察大学校警察情報通信研究センター所長でドローンに詳しい沢田雅之氏は、海外では不審ドローン対策の研究が非常に盛んであると指摘しています。具体的には、暗闇でも特殊カメラで機体を探知する装置や、ドローンに搭載されたシステムをハッキングで制御する技術の開発が進んでいる模様です。中には、訓練されたワシによる捕獲を検討した国もあったと聞き及んでおり、その対策の切実さが伝わってきますね。
沢田氏は「不審ドローン対策では即応性が求められ、これは各国共通の課題だ」と述べた上で、「導入可能な対策がないか、海外からの情報収集も重要だ」と強調されています。国際的なイベントを目前に控えた日本にとって、これは喫緊の課題であり、世界の最新の知見に学び、常に一歩先の対策を講じる柔軟性が求められるでしょう。私たちも、この便利な道具が凶器とならないよう、法規制やモラルについて改めて考える必要があると考えます。
この一連の報道に対し、SNSでは「空飛ぶ脅威への対策は急務だ」「高性能化するドローンを捕まえるのは大変そう」「日本の技術力で海外に負けない対策を開発してほしい」といった、不安と期待が入り混じった様々な反響が寄せられています。警視庁が2019年5月の一斉摘発で押収したドローン(東京都江戸川区)の図・写真を見ると、手のひらサイズの機体が大きな脅威を秘めていることが改めて実感されるでしょう。